ITと民主主義 拡大する溝

「監視資本主義は(中略)上からのクーデターである(中略)人々の独立主権をひっくり返し、民主的な脱統合に向けた危険な流れに向けた大きな力だ(後略)」
─ショシャナ・ズボフ、『監視資本主義 人類の未来を賭けた闘い[1]』、2019

「我々はウソを聞かされている(中略)ITが仕事を奪い、賃金を引き下げ、格差を拡大し、健康を脅かし、環境を破壊し、社会を劣化させ、子供たちをダメにして、人間性を阻害し、未来を脅かし、あらゆるものを台無しにする寸前だといつも言われている」
─マーク・アンドリーセン、『技術楽観主義マニフェスト[2]』、2023


IT(情報技術)と地政学をめぐる不安は、特に米中のハイテク対立といった形で、いたるところに登場する。だが技術面での優位性をめぐる大国同士の争いより、さらに根本的な紛争が生じている。もっと根深いところで、システムとしてのITと民主主義とが歩んで来た道が両者を対立させ、実害が生じるほどとなっている。

現在のITで最大のトレンドは、人工知能とブロックチェーンだ。人工知能は中央集権化されたトップダウンの統制を強化し、ブロックチェーンは人々を孤立させ、過激な見方を煽り、金融資本主義を激化させる。どちらの結果も、民主的多元主義の価値観をボロボロにしてしまう。このためITこそが民主主義への最大級の脅威と思われてしまっている。外国の専制支配者や、国内で民主主義を転覆させようとする連中の双方にとって、ITが強力なツールと見なされているのも当然だろう。

民主主義も、もともとは都市国家の統治手法を大陸全体にまたがる何百万人もの市民に拡大しようという急進的な実験だった。それなのに今日の民主主義は、現状の政府や統治手法を温存するだけの、現状維持の手口としか思われていない。そして現在、世界の多くの場所で従来の政府や統治手法は硬直し、時代に取り残され、党派的で、麻痺していると思われ、人々の支持を失う一方なのだ。だから多くのハイテク至上主義者たちが民主的参加を見下すのも、わからなくはない。彼らは民主主義が進歩の足を引っ張ると思っているのだから。逆に民主主義支持者たちの中では、技術進歩が専制主義的な敵による支配や社会の内部崩壊をもたらすのではと恐れられている。

本書では、こんな悲劇的な対立は必要ないものだと示す。ITと民主主義をきちんと理解すれば、この両者は天性の強力な同志になれる。そう言ってもなかなか信じてはもらえないかもしれない。IT支持者と民主主義支持者の双方の間には、この10年で恨みと不信の溝が生まれてしまっているのだから。それがそうそう簡単に埋まるはずもない。それにこの紛争の双方が相手に対して抱いている懸念や批判は、決して不当なものではない。双方の言い分を十分に理解して受け入れなければ、対立の根本原因を見極めて克服できるはずもない。だから、まずはその言い分を虚心に描き出すことから始めよう。人々が不安に思っている話があれば、あまり裏付けがないものであっても見てみよう。極端な分断を埋めようと努力する中で、民主主義的なITという夢物語も実現に近づくはずだ。

ITによる民主主義への攻撃

過去10年にわたり、ITは正反対の2つのやり方で、民主主義を脅かしてきた。だがその2つのやり方は、相互に関連し合っている部分もある。ダロン・アセモグルとジェームズ・ロビンソンの有名な議論によれば、自由な民主主義社会は社会崩壊と専制主義との間の「狭い回廊」に置かれている[3]。ITは両側からその回廊を狭め、自由な社会の可能性を押し潰しているのだ。

片やIT(たとえばソーシャルメディア、暗号化技術などの金融技術)は社会の仕組みを破壊し、人々の意見をますます極端に走らせ、規範を潰し、法執行を無力化し、金融市場の速度と到達範囲を拡大する。これでITは民主政治の手の届かないところに行ってしまったと思われている。こうした脅威を「反社会」と呼ぼう。他方でIT(たとえば機械学習、基盤モデル、IoT)はますます中央集権的な監視能力を強化している。少数のエンジニアたちが、何十億もの市民や顧客の社会生活ルールとなるシステムのパターンを作り上げてしまっているため、人々が自分の生活やコミュニティ形成に、まともに参加できる範囲が狭まっている。この脅威を「中央集権」と呼ぼう。いずれの脅威も民主主義の核心を攻撃している。アレクシス・ド・トックヴィルが『アメリカの民主主義[4]』で述べたように、深く多様で、非市場的で分散化した社会市民的なつながりがないと、民主主義は機能できないからだ[5]

最近のITがもたらす反社会的な脅威には、社会的、経済的、政治的、法的、実存的な側面がある。

・社会的な側面:ソーシャルメディアはこれまで社会的に孤立していた人々(たとえば保守的な地域における性的、宗教的なマイノリティ)がつながり合うための強力な新しいプラットフォームを提供してくれた。だが各種調査を見ると、平均としてそうしたツールはむしろ社会的孤立や疎外感を悪化させている[6]

・経済的な側面:インターネットと在宅勤務の増大がもたらす地理的、時間的、副業の容易さといった柔軟性は、開発途上国や、伝統的な労働市場におさまりにくい労働者の機会を広げてくれた。だがこうした仕組みの便益を労働者が享受するための、適切な労働市場制度(たとえば労働組合や労働規制)はほとんど生まれていない。このため職場の不安定性が高まり、多くの先進国で中産階級の「空洞化」をもたらした[7]

・政治的な側面:多くの先進民主主義国では、人々の見解が極端なものに走り、過激政党が躍進している。ソーシャルメディアの影響については多くの研究が行われているが、当初は人々の違いを超えた社会的、政治的な絆を強化できると思われていたにもかかわらず、特にアメリカでは2000年以来のポピュリスト的な社会の分断と双極化をもたらした可能性が指摘されている[8]

・法的な側面:過去数十年における金融イノベーションの拡大は、消費者への明らかな便益を(リスク削減、資本配分、融資アクセスの面で)あまりもたらしていない。むしろ金融システムの相当部分でリスクを増やし、各種の金融不安を抑える規制レジームに逆らい、それを迂回するために使われてしまっている[9]。最も顕著な例は、住宅金融をとりまくイノベーションがもたらした2008年の金融危機だし、(局所的とはいえ)最も極端な例はデジタル「暗号」資産や通貨をめぐる最近の活動だろう。既存の規制レジームが対応できていないため、これは投機、ギャンブル、詐欺、規制逃れや脱税など反社会活動の機会を増大させている[10]

・人類存続にかかわる側面:社会的に重要なものを見極め、それに集団として対処する能力が分断され、そのため大量破壊をもたらす技術の発達に対抗できない。そうした破壊技術は環境荒廃(たとえば気候変動、生物多様性の喪失、海洋酸性化)から、もっと直接的な兵器(たとえば偏向した人工知能やバイオ兵器)による破滅の可能性までさまざまだ[11]

しかしITは、このように民主社会のまとまりを弱めるだけではない。一方では政府の統制を強め、少数の民間アクター(訳注:行為者、当事者といった意味)集団の手に権力を集中させることで民主主義を脅かす側面も、ますます強まっている。

・社会的な側面:情報技術の最も一貫した影響は、情報提供を拡大化し、加速化したことだ。おかげで私生活の領域が劇的に侵食され、人々の広い活動がますますデータ化されている。そうしたデータにはさまざまな利用法があるだろう。しかしそのデータは万人が使えるわけではないし、大量のデータから使い物になる情報を抽出するには、大規模な統計モデル(つまりAI)が必要となる。データにアクセスできて、モデルへの投資能力を持つものは、一部の企業や組織に限られてしまう。さらに、これらのモデルもデータと資本を大量に使うことで大幅に改善するので、そうした企業や組織を擁する社会は、いわゆる「AI競争」でも優位に立てるため、あらゆる社会でそうした情報権力の集中を可能にすべきだという圧力が生じている[12]。この圧力のため、空前の監視システムと情報の流れへの中央集権的な統制が当然なのだという気運が生まれている。

・法的な側面:最近のAIの進歩により、民主主義社会の基盤となる重要な権利が侵害されている。そしてそのAIが何をするかについての重要な選択を行うのは、似たような社会的出自を持つ限られたエンジニアたちに委ねられている。知的財産法などの創作活動保護は、大規模AIモデルがコンテンツを「リミックスして置き換え」てしまえるため、有名無実化している。プライバシー保護は情報の爆発的な拡大に追いつけていない。ブラックボックス化したAIシステムは、具体的に何をしているかはっきりしないため、反差別法も嘆かわしいほどこれに対応できていない。こうした問題に対応できそうなエンジニアたちは、通常は営利企業や防衛産業で働いており、その多くはきわめて限られた教育および社会的な出自となっている(通常は白人かアジア人で、男性、無神論者、教育水準が高い等)。これでは社会の広範な意志を統治に反映させようという、民主的な法レジームの中核的な信条は脅かされかねない[13]

・経済的な側面:AIやITは1980年代半ば以来、(特に教育水準の低い人々の)人間労働を補うのではなく、むしろ人間労働をAIやITに置き換える傾向が広く見られる。このため過去数十年で、労働の所得シェアは下がり、資本に蓄積する所得シェアが劇的に上昇する中心的な要因となっているという。これは先進国における所得格差増大の主な原因とされる[14]。世界中で見られる市場支配力、利ざやの増大、そして(あまり一貫してはいないが)産業集中も、この労働の所得シェア低下に伴って生じている。これはIT化の最も進んだ国や産業部門で顕著なのだ[15]

・(地)政治学的な側面:こうした力は専制主義諸国や、反民主主義的な政治運動を強化した。人工知能などの大規模データ処理ツールは、大量監視を可能にするし、それが可能だからこそ各種政府は大量監視をしたくなってしまう。おかげでこうしたツールは、政府による検閲と社会統制を維持しやすくする。またITは経済の力と社会統制のレバーを少数の(通常は企業の)チョークポイントに集中させてしまい、それにより資本所得と市場支配力が高まると同時に、権力が少数のエンジニアに集中してしまう。おかげで間接的にせよ、専制主義レジームが、好きなときに経済と社会の「要衝」を操作または掌握しやすくなってしまう[16]

さらに、この2つの脅威は交差している。専制主義勢圏はますますSNSや暗号資産の「カオス」を利用して、民主国内部の分断や紛争を煽る。中央集権化されたSNSプラットフォームは、AIを使って自社サービスへの利用者エンゲージメントを最適化し、誤情報と意見のクラスタリングを煽る結果となっている。もちろん両者が積極的に補完し合っているわけではなく、多くの点で正反対の動機を持つことさえある。だが、どちらの力も民主主義社会に圧力をかけてそれに対する信頼を引き下げる点で同じであり、おかげで先進民主主義社会のほとんどで、人々の民主主義への信頼は計測開始以来の最低水準となっている[17]

ITに対する民主主義の敵意

しかし、この敵意は決して一方的なものではない。民主主義のほうもITに対して強い敵意を抱いており、さらにあらゆるITを十把一絡げに見ようとする傾向が強まっている。かつて民主主義国における公的部門は、世界のどこでも情報技術の発達を主導する存在だったが(例:最初の電子計算機、インターネット、GPS)、今日の民主主義のほとんどは、むしろITの発達を制限することにばかり専念して、それが生み出す機会と課題の両方に対応できずにいる。

この失敗の影響は4つの形で表れている。まず、民主主義国の世論とその政策立案者たちはますます大規模IT企業や、果ては多くのIT支持者たちまで敵視するようになり、ハイテク企業を叩くいわゆる「テックラッシュ」のトレンドが生じた。第二に、民主主義国は情報技術開発への直接投資を大幅に減らした。第三に、民主主義国は公共部門でのIT利用や、公共部門の大規模な参加を必要とするITの採用に乗り気ではない。最後にこれら3つともに関連して、民主主義国政府は、持続可能な形でITの発展を進めるための公共参加、規制、支援が求められる分野にほぼ対応できず、社会や政治の旧態依然とした既存の問題にばかり注力している[18]

Figure showing take off in discussion of the "techlash" following 2017 in English books.

図 2-0-A いわゆる「テックラッシュ」 の増加



出典:Google Ngram Viewer[19]

ITに対する公共と政策担当者の態度は、2010年代に急激に悪化した。2000年代末や2010年代初頭には、SNSとインターネットはオープン性と市民参加の切り札と見なされていたが、2010年代末になると、これまで指摘した各種問題への批判も広まり、世論調査も少し批判に傾いてきた[20]。この変化が最も強く見られるのは、エリートたちの態度だろう。キャシー・オニール『あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠』、ショシャナ・ズボフ『監視資本主義』といったベストセラー書籍や『監視資本主義 デジタル社会がもたらす光と影』といった映画が世間で話題を集め、政治的な左右を問わず政治指導者たち(たとえば左派のジェレミー・コービンや右派のジョッシュ・ホーリー)もIT産業に対してますます悲観的で攻撃的な論調を強めている。「テックラッシュ」はこうしたITに対する反発を示す用語として普及した。「キャンセルカルチャー」の台頭もこの動きに拍車をかけている。これはソーシャルメディアを使って、有力者を攻撃したり、その文化的な影響力を貶おとしめたりする活動を指すもので、しばしばIT産業の指導者たちが標的となっている。

これを受けて、EUとアメリカの規制当局も対応に乗り出した。アメリカでは主要なIT企業に対する反トラスト調査が劇的に強化され、ヨーロッパでは一般データ保護規制(GDPR)などの政策介入や、データガバナンス法、デジタル市場法、デジタルサービス法の三本柱などが生まれた。こうした規制はどれも明確な政策根拠があるので、ITに有益な部分も多いのかもしれない。しかし、否定的な論調、ハイテク開発で当然あるべき公共支援が大幅に欠けていること、さらに先進民主主義国の評論家や政策担当者たちが明るい技術ビジョンをまともに語らないせいもあり、IT産業が包囲攻撃を受けているような印象が生じている。

情報技術に対するこの積極的な公共的関心の低下を示す最も明確な定量的証拠は、GDP比で見た公的研究開発(R&D)費、特に情報技術に対するものの低下だろう。先進民主主義国の大半では、公共部門の研究開発費は、GDP比でここ数十年にわたり下降を続けている。その一方で企業のR&D支出は激増しているし、中国(中華人民共和国)政府はGDP比での支出を大幅に増やし、それを情報技術に集中させている[21]。図2-0-Bはアメリカの例を示したものだ。

Chart showing the declining trend of federal government funding for research and devleopment while business investment rises

図 2-0-B 研究開発の政府支出の低下と民間による追い越し



出典:National Center for Science and Engineering Statistics[22]

この定量的な面だけでなく、情報技術開発に対する公的支援も、それに匹敵する低迷ぶりを示している。かつては公共部門(アメリカ)がインターネットの原型の開発を主導したし、他の民主主義国でもパーソナルコンピュータなどの基盤を作ったが(たとえばフランスのMinitel)、いまや情報技術でのほぼあらゆる大きなブレークスルーは民間主導しゅどう[23]

インターネットは当初、ほぼすべて公共部門と学術部門によって開発され(以下の「3–3失われた道ダオ」の節を参照)、オープン標準に基づいていたのに対し、21世紀になってからの最初の20年を支配した「Web2.0」の波や、最近の「Web3」および分散ソーシャル技術の動きは、実質的にまったく公共的な財政支援を受けていない。これは民主主義国の政府が、デジタル通貨、支払い、IDシステムの可能性を理解できずにいるためだ。コンピュータの利用は、第二次世界大戦と冷戦中に民主主義政府が大きく促進させたが、今日の政府は計算機科学(コンピュータサイエンス)に革命を起こしている「基盤モデル=AI」のブレークスルーにほとんど何の役割も果たしていない。それどころか、OpenAIの創業者サム・アルトマンとイーロン・マスクは、当初は政府の支出を求めたのに何度も断られて、民間の営利目的の資金源に頼らざるを得なかったとされる。OpenAIはその後GPTモデルを生み出し、その成果はAIの新しい可能性について、人々の想像力をかきたてるものとなっている[24]。この点でも専制主義国はまったく対照的だ。たとえば中国やアラブ首長国連邦は、野心的な公共情報技術戦略を発表して実施している。そこには独自の最先端GPT競合システム開発も含まれているのだ[25]

こうした、民主主義国における公共部門の技術関与の欠如は、研究開発以外に、実装、採用、支援にも広がっている。それが最もよくわかる分野は、デジタル接続の品質と提供、および教育である。ただし、ここではデータにばらつきが見られる。多くの高度な民主主義国(たとえばスカンジナビア諸国)は高品質できわめて普及したインターネットを持つ。しかし、先進的な専制主義諸国は、驚いたことに似たような発展段階の民主主義国を劇的に上回っている。これは特に最新の接続技術で顕著だ。たとえばSpeedtest.netによると、中国は、「ひとりあたり所得」では世界72位でしかないのに、インターネット速度で第16位である。サウジアラビアなどの湾岸君主国もまた、国力よりもはるかに高い接続性を持っている[26]。最新のモバイル接続5Gの性能はさらに劇的だ。各種の調査で、サウジアラビアや中国は常に5Gカバー範囲が広い国のトップ10に入っており、所得水準をはるかに上回る順位なのだ。

しかし、民主主義国における政府の責任という点でさらに中心的なのは、公共サービスのデジタル化だ。多くの中所得国や富裕な民主主義国は、専制主義国に比べると電子政府への投資が少ない。国連電子政府指数(EGDI)とは、電子政府の3つの重要な側面、つまりオンラインサービスの低下、電気通信への接続性、人的資本の総合指数だ。2022年にはいくつかの専制主義政府が高ランクにつけていた。たとえばUAE(13位)、カザフスタン(28位)、サウジアラビア(31位)は多くの民主主義国より上位となる。特にカナダ(32位)、イタリア(37位)、ブラジル(49位)、メキシコ(62位)の順位の低さが目につく[27](訳注:日本はUAEに次ぐ14位)。

既存の公共サービスのデジタル化は、民主主義国のIT化の中で最も平凡なものだとすら言える。ITは、有意義なサービスとは何かという考え方を刷新してしまう。そこから出てくる目新しい分野で、民主主義政府はまったく時代に取り残されている。かつては政府が提供する郵便サービスや図書館が、民主的コミュニケーションと知識流通の屋台骨だった。だが今日ではほとんどのコミュニケーションは、SNSと検索エンジンを通じて流れている。かつての集会は公園や公共広場で行われていたが、今日では公共広場がオンライン化されている。それなのに民主主義国は、デジタル公共サービスを提供し支える必要性をほぼ完全に無視してきた。私有のⅩ(旧Twitter)は、公人たちに絶えず濫用されているのに、その最も重要な競合である非営利のMastodonとその基盤となるオープンなActivityPub標準は、公的支援がわずか数十万ドルという実に貧相な状況であり、仕方なくPatreonを通じた寄付に頼っている[28]。もっと広範には、オープンソースソフトウェアなどのコモンズに基づくWikipediaなどの公共財は、デジタル時代におけるきわめて重要な公共リソースになっている。しかし各国政府の支援は皆無どころか、むしろ他の慈善団体に比べて不利な条件をつけている(たとえばオープンソースソフトウェアの提供者は一般に、税控除の対象となる慈善団体にはなれない)。専制主義国は中央銀行デジタル通貨の計画を推進しているのに、ほとんどの民主主義国は実験を始めたばかりだ[29]

野心を最大限に発揮すれば、民主主義国も多くの専制主義国同様に、ITで社会構造を再編する急進的な実験を促進・支援できないはずがない。しかしここでも民主主義国は、そうした実験を支援するよりも邪魔することがあまりに多いようだ。中国政府は都市を作り、規制を見直すことで、深圳のように無人運転車を促進し、もっと広くは政策、規制、投資のほぼあらゆる面をカバーする詳細な全国戦略を構築している[30]。サウジアラビアは、開発公社NEOMにより、各種のグリーン技術やスマートシティ技術を活用すると称するスマートシティTHE LINEなどの計画を発表し、急ピッチで建設を進めている。一方で、民主主義国ではGoogleのサイドウォーク・ラボのように、きわめて慎ましい局所的なプロジェクトですら、地元の反対に押し潰されている[31]

技術至上主義者たちも規制と用心が重要だと考える分野においてすら、民主主義国は社会的な課題について業界が求めるソリューションをなかなか見つけられずにいる。技術至上主義者たちは、各種の新興技術が人類や社会の存続までも揺るがすリスクをもたらす恐れがあると考えるようになっている。そうした危険は、起きてしまってからでは対処が難しい。たとえば、急速に能力を自己改良できる人工知能、大規模な金融リスクをもたらしかねない暗号資産、極度に感染力の強いバイオ兵器などがある。技術至上主義者たちはいつも、民主主義国政府がそうしたリスクに対応するどころか、それを考えようともしないと嘆く。そうした危険を伴うもの以外にも、規制改革がないと持続可能ではない技術は多い。労働法は、技術に支援された地理的・時間的なフレックス労働に対応できていない。著作権は、大規模AIモデルへの入力データについて財産権を保護しきれていない。ブロックチェーンが可能にする新しい企業ガバナンスは証券法で扱いきれず、しばしば法的なトラブルを引き起こす。

しかし、公共部門の新しいビジョンについての大胆な実験は専制主義国のほうがずっと一般的ながら、民主主義そのものにとってはるかに根本的な問題がここにはある。投票、請願、市民のフィードバック募集など、国民の同意、参加、正統化の仕組みだ。ほぼすべての民主主義国では、主要な役職に対する投票は数年に一度しか行われず、そのルールと技術は一世紀にわたってほとんど変わっていない。市民は世界的に瞬時にコミュニケーションをとるのに、政治的に意見表明ができる地理的な範囲はほぼ固定されており、しかもその粒度はきわめて粗い。コミュニケーションやデータ分析の現代的なツールがあっても、市民の民主的な生活に日常的に使用されているものはほとんどない。

これに対して独裁国家は、監視体制(良い面と悪い面の両方)と社会統制を強化するために、最新のデジタルイノベーションを積極的に活用している。たとえば、中国政府は、人口移動を監視するために顔認識システムを広く使用し、金融監視を容易にするためにデジタル人民元などの監視付きデジタル決済の採用を奨励し(同時にプライベートな代替手段を規制)、さらには市民活動を広範に追跡している[32]。ロシア政府は、数年にわたって、抗議活動に参加している人物を特定し、事後拘束するために顔認識システムを使用しており、これで政権や警察へのリスクを大幅に低減しつつ、大規模に反対者を排除している[33]。これらの技術は強化されており、2022年2月のウクライナへの全面侵攻以来、戦争徴兵の実施にも使用されている[34]。多くの専制主義国がITを積極的に受け入れようとしているのに対し、民主主義国はIT自体の反民主的な傾向もさることながら自らのIT軽視のせいで、ITに取り残されているとさえ言える。

技術の現状は社会が選んだ投資の結果である

なぜこんなことになってしまったのだろうか。こうした対立はITと民主主義社会の自然な流れなのだろうか。別の未来はないのか?

さまざまな研究から見ても、ITと民主主義は多様な形で共進化できるはずだ。ほとんどの民主主義国がたどっている道は、政策、態度、期待、文化を通じて行われた集団的選択の結果でしかない。しかし、SFから現実世界の事例まで、違う視点をとればさまざまな可能性が見えてくる。

SFを見れば、人間精神が想像できる未来は驚くほど多種多様だとわかる。多くの場合、こうした想像は研究者たちや起業家たちが開発する多くのITにヒントを与える。最近のITの方向性を予見するSFも多い。1992年の古典『スノウ・クラッシュ』で、ニール・スティーヴンスンはほとんどの人が人生の大半を没入的な「メタバース」で過ごす未来を思い描いた[35]。人々がメタバースばかりで過ごすため、現実世界のコミュニティや政府などを支える社会参加が潰れ、その空白にマフィアやカルト指導者たちがはびこり、大量破壊兵器の開発余地ができてしまうという作品だ。この未来は前出の、民主主義に対するITの「反社会」脅威と密接に対応している。スティーヴンスンら作家はさらにこうした可能性を拡張し、それが技術の開発に大きく影響している。たとえばMetaという社名は、スティーヴンスンのメタバースにちなんだものだ。また「超知性」を作り出すことで権力を集中させようとする技術的な傾向も、よくSFの主題として使われる。たとえばアイザック・アシモフやイアン・バンクス、レイ・カーツワイルやニコラス・ボストロムの予言的未来主義、『ターミネーター』や『her/世界でひとつの彼女』などがある[36]

だがそうした作品で描かれる可能性は、それぞれずいぶん違っているし、SFに見られる技術的未来のビジョンは他にもいろいろある。実際、最も有名なSFは、どれもまったく違う可能性を示している。史上最も人気であろうSFテレビ番組『宇宙家族ジェットソン』『スタートレック』を見ると、前者は1950年代のアメリカの文化と制度を大幅に強化した未来を示し、後者は多様な異星人の知性が交差するポスト資本主義の未来を示している(これについては後述)。他にもアーシュラ・ル=グウィンのポストジェンダーおよびポスト国家の想像力から、オクタヴィア・バトラーのポストコロニアリズムの未来主義まで、実にさまざまな例が何千種類もある。そのどれもが、技術が社会と共進化する、さまざまな方法を示唆している[37]

SF作家だけではない。科学技術研究(哲学、社会学、科学史を含む)の主なテーマは、科学技術の発展に内在する偶然性と可能性だ。つまりその発展には単一の必然的な方向性があるわけではないのだ[38]。政治学や経済学などの社会科学では、伝統的に技術進歩は固定され、与えられたものと考えられてきたが、そうした分野も技術の偶発性を次第に認めるようになってきた。世界的な経済学者、ダロン・アセモグルとサイモン・ジョンソンは、技術進歩の方向性は、社会政策と改革でかなりの程度決まるのだと主張し、技術の方向性を左右した、過去の歴史的な偶然を記録した本を最近になって発表している[39]

そうした技術の方向性を最も強烈に示しているのは、今日の各国における技術進歩の道筋だろう。一流の思想家たちはかつて、技術の力を使い社会格差を一掃できると予測していたが、今日では、大小の技術システムのほうが社会システムを左右し、そこで公式に表明されるイデオロギーすら決めてしまう。中国の監視体制はそうした技術的未来のひとつだが、ロシアのハッキングネットワークは別の未来を示すようだ。Web3がもたらす大規模なコミュニティ空間も、また別の未来を示している。私たちが注目してきた主な西側資本主義国は4番目の未来だろうし、インド、エストニア、台湾の多様なデジタル民主主義は、まったく別の未来らしい。これらについて本書で詳しく検討する。また、主にWeb3コミュニティ主導のアプローチに沿った、オープンソースと相互運用性に基づいて構築されるアフリカモデルも考えられる。これは多くのアフリカ文化の共同体志向を反映したものだ。ITは収束させるどころか、あり得る未来を増殖させている。

では西側の自由民主主義国における現在の技術と社会の関係の道筋が不可避ではないのならば、私たちはどのようにして、こうした紛争への道を進むような選択を行っているのだろうか。そしてどうすればそこから抜け出せるのか?

民主主義社会が行った技術的な選択にはさまざまな見方があるが、おそらく最も具体的で定量化しやすいのは投資の実施額だ。それを見ると、西側諸国の自由民主主義国(つまり世界の金融資本の大半)がITの未来に対して行った投資が、技術の経路についてどんな選択を行ったかがはっきりわかる。そうした技術の多くはごく最近になって生まれたものなのだ。近年ではそうした投資は主に民間部門が推進しているが、そこに反映されているのはむしろ、政府が以前に設定した優先順位であり、それが多くの面で民間部門の応用に浸透し始めたばかりだ。

手始めにますますしっかり計測されるようになってきた、ベンチャーキャピタル産業のトレンドを見てみよう。過去10年のIT部門におけるベンチャーキャピタルは、劇的かつ圧倒的に、人工知能と暗号資産に隣接したWeb3に集中的な投資を行っている。図2–0–CはNetBase Quidが集めてスタンフォード大学人間中心人工知能センターが図化した『2022年AI指数報告』掲載の、AIへの民間投資データである。その投資は2010年代を通して爆発的な成長を見せて、民間技術投資の中で圧倒的な割合を占めている。図2–0–DはWeb3空間について同じ結果を示している(ただし時期は異なり、4半期ごとのデータ)。こちらはPitchbookのデータに基づいてGalaxy Digital Researchが図化したものである。

Figure showing the steady rise of AI venture capital investing even when there has been a recent decline in technology venture capital investing.

図 2-0-C 2023 年までの 7 年における AI 民間投資



出典:NetBase Quid via 2023 AI Index Report**[40]**

Shows the somewhat uneven but clear rise of funding and deal count in the crypto space by venture capitalists 2016-2021

図 2-0-D 暗号資産への VC 案件と投資の推移



出典:National Venture Capital Association と Pitchbook[41]

しかしこれらの技術が優先的な投資先となったのは比較的最近のことであり、「市場」の論理から生まれたようには見えても、はるかに長期にわたる、社会全体が行った一連の選択を直接的に反映しているのだ。つまり、民主主義国の政府が行った投資から生じたのである[42]

さらに、これらの投資は他の方向に向く可能性があったという話にとどまらない。この傾向はごく最近になって生じたものであり、その直前までの投資はまったく別の方向に向いていたのだ。そうした投資は、過去数十年の標準的なITに結実している。人工知能は、1980年代の大半を通じて、来たるべき革命として喧伝されていた。図2–0–Eは、Google Ngramsが集計した、英語書籍でのartificial intelligence(人工知能)という言葉の相対的な頻度を示している。しかし、1980年代を特徴づける技術はまったく正反対のものだった。1980年代の技術とは、個々の人間の創造性をコンピューティングで補完するパーソナルコンピュータだったのだ。1990年代は、現実逃避的な仮想世界と人々を孤立させる暗号の可能性に関するスティーヴンスンのSF的想像力に取り憑かれ、インターネットという結合手段が世界を席巻し、前例のないコミュニケーションと協力の時代が訪れた。2000年代の携帯電話、2010年代のソーシャルネットワーク、2020年代のリモートワークの基盤……これらはどれも、暗号資産のハイパー資本主義や人工超知能に目を向けたものではない。これは公共部門の研究資金提供者が、さまざまな(地)政治学的要因でこれらのITのサポートから、暗号と人工知能への投資へと大幅に遅れてシフトしたことを(かなり遅れて)反映したものなのだ。これについては「3–3失われた道ダオ」で論じよう。

Shows the relative frequency in English books of "artificial intelligence" from 1950-2019 showing a surge in the late 1980s followed by a retreat and then a much greater surge beginning in the mid 2010s.

図 2-0-E 英語書籍に見られる「artificial intelligence」という言葉の相対頻度 1950-2019



出典:Google Ngrams[43]

21世紀のさまざまなイデオロギー

技術の経路があらかじめ決まっておらず、協働的な投資選択で大きく左右されるのなら、可能な方向の中でどれを選ぶかについて、社会として私たちが持つ柔軟性をどう考えるべきなのだろうか? 選択の余地はどのくらいあって、その選択肢にはどんなものがあるのだろうか。

社会が取れる技術の方向性というのは、イデオロギーのようなものだと思ってほしい。社会は、共産主義、資本主義、民主主義、ファシズム、神権政治など、さまざまなイデオロギー(の組み合わせ)に基づいて、国民をまとめる方法を選択できるのは「常識」である。どのイデオロギーにも長所と短所があり、人によってどれに魅力を感じるかも違い、社会の中でそのイデオロギーが持つ一貫性や厳しさも異なる。どのイデオロギーも、設定次第ではその社会でまったく機能しないこともあるし、特定の歴史的および社会的条件を必要とするものもある。

それと同じように、技術の経路もいろいろ考えられる。技術的に可能な範囲は無限ではないし、その範囲内ですら、好き勝手に変更できるものではない。簡単なものも、難しいものも、まったく不可能なものもある。しかし、すべてがあらかじめ決まっているわけでもない。将来的に実現可能なビジョンと、それらを可能にする技術のセットがあるのだ。私たちの行う集合的な技術投資は、そうした可能性の中から社会としてどれを選ぶかを左右するのだ。

これは今日ありがちな、技術をめぐる直線的で進歩的な話ほどはなじみがないかもしれない。だが決して目新しい見方ではない。文学、学問、さらにはエンターテインメントですら繰り返し出てくるテーマなのだ。顕著な例としては、シド・マイヤーが作成したコンピュータゲームのシリーズ「Civilization」がある。このゲームでは、プレイヤーが先史時代から未来まで、社会の道筋を計画する。このゲームの特徴は、実に多様な技術経路が選べること、そしてその技術の経路が、そこで選ばれた社会の仕組みと絡み合ってゲームが進むということだ。

シリーズ最新作のCivilization VI、特にその拡張パック「Gathering Storm」は、この考え方をとてもエレガントに示している。このゲームでは、「情報時代」に入ると「合成テクノクラシー」、「企業リバタリアニズム」、「デジタル民主主義」という3つのイデオロギーのどれかを選択できる。そのそれぞれに長所、短所、技術開発とのつながりがある。それぞれの名前は少し扱いにくいので以下では短縮するが、この分類は20世紀の共産主義、ファシズム、民主主義のように、現代の大きなテクノイデオロギー論争を、なかなかうまくまとめている。

■人工知能とテクノクラシー

まず、技術の未来について最も普及しているビジョンは、人工知能(AI)を核に社会がそれにどう適応するかをめぐるものだ。これは、Civilization VIの「合成テクノクラシー」カテゴリ、略して「テクノクラシー」に対応する。

テクノクラシーは、OpenAIの創設者サム・アルトマンが「あらゆるものに対するムーアの法則」と呼ぶものを生み出す、AIの可能性を重視する。AIによってすべての物質的な財が安価で豊富になり、物質的希少性が解消される可能性すらあるというのがアルトマンの主張だ[44]。しかしそこから生じる豊かさは、平等に分配されるとは限らない。生み出された価値は、AIシステムを制御してその方向性を指示する小さな集団に集中しかねない。したがって、テクノクラートの社会ビジョンの重要な要素として、「ユニバーサルベーシックインカム」(UBI)による物質的再分配が求められることが多い。もうひとつ重視されているのは、AIが人間の制御を逃れて人類の生存を脅かすリスクである。そのため、これらのITに誰がアクセスできるかについて、強力で中央集権的な制御の必要性と、ITが人間の欲求を忠実に実行するよう構築されているという保証が求められる。支持者ごとに細かい違いはあるが、「汎用人工知能」(AGI)という概念が中心となっている。これは一般化された形で人間の能力を超えるAIを指すもので、これが実現すれば人間の個人または集団の認知力などまったく無力となる。

シリコンバレーでのこの見解の主な主導者は、アルトマンとその導師リード・ホフマン、そして最近までアルトマンのOpenAI共同設立者だったイーロン・マスクだ。この見解は中国でも人気があり、ジャック・マー、経済学者の余永定、さらにはマルクス主義の「中央計画」の考えに強く依存した中国が公式に実施している、次世代人工知能発展計画によっても推進されている。この見解はSFにも登場し、特に前述のアシモフ、バンクス、カーツワイル、ボストロムなどの作家の作品に顕著だ。ボストロムの最新作『ディープユートピア 解決された世界での人生と意味』(未邦訳)は、この見解の最も純粋な表現と言える[45]。OpenAI、DeepMindなどの先進的な人工知能プロジェクトはこの見方に準拠している。2020年米国大統領選に出馬したアンドリュー・ヤンの政治運動は、この視点を政治の主流に持ち込んだし、テクノクラート的な考えは、エズラ・クライン、マシュー・イグレシアス、ノア・スミスなどの評論家を含む「テクノロジー左派」の思想の多くにも多少は表れている。

■暗号資産とハイパー資本主義

2番目の見解は、主流メディアではあまり一般的ではないが、ビットコインやその他の暗号資産を核とするコミュニティや、それに関連するさまざまなインターネットコミュニティでは主流となっている。これは、Civilization VIの「企業リバタリアニズム」カテゴリに示されたもので、以下では「リバタリアニズム」と略そう。

リバタリアニズムは、暗号とネットワークプロトコルが人間をまとめる組織と政治に取って代わり、政府などの集団による「強制」や規制から解放された、自由な市場に個人が参加できるようにしようという発想を核としている。リバタリアン思想の中心的なインスピレーションは小説、たとえばアイン・ランドやスティーヴンスンの作品からきている[46]。スティーヴンスンの著書、特に前述の『スノウ・クラッシュ』や『クリプトノミコン』は、どう見てもディストピアの警告だし、作者もそのつもりで書いていると明記されているのだが、それでもリバタリアニズムの信奉者はその小説世界をお手本にしている[47]。これらの作品に登場し、それ以来リバタリアンコミュニティの中心となっている代表的な技術は、没入型仮想世界(スティーヴンスンのメタバース)、政府から独立したデジタル通貨、浮遊都市や「海上居住地」などの無政府空間を拠点とする私的独立主権、集団的統制/法律を回避する手段としての強力な暗号だ。ビットコイン、Web3、4chanなどの「周縁的」ながら影響力のあるオンラインコミュニティは、リバタリアン的な視点の中核的な拠点となっている。

おそらくテクノクラシーほど主流ではないこともあって、リバタリアニズムにははるかに明確な知的規範とリーダーの集団とがある。ジェームズ・デール・デイビッドソンとウィリアム・リース=モッグ卿による『独立主権の個人』、メンシウス・モルドバグというペンネームでカーティス・ヤービンが著した著作、バラジ・スリニバサンによる『ネットワーク国家』、および『青銅器時代のマインドセット』(いずれも未邦訳)は、このコミュニティで広く読まれ、引用されている[48]。ベンチャーキャピタリストのピーター・ティールは、彼が資金提供し、支援した人々の研究(前述の著者など)とともに、中心的な知的リーダーとして広く見なされている。

リバタリアニズムは、民主主義国のナショナリストや極右と、密接ながらもいささか複雑な関係を持っている。リバタリアニズム参加者の大半はナショナリストや極右の集団に共感し、政治面に限っては支持している。これは、ドナルド・トランプとその支持者の主な資金提供者としてティールの名が浮上したことからも明らかだ。実際、有力な極右政治家の一部はリバタリアンの世界観と密接な関係を持っている。著名な英国保守党議員のジェイコブ・リース=モッグはウィリアム・リース=モッグ卿の息子だし、ティールはオーストリアの元首相セバスチャン・クルツを雇用しているし、ティールの弟子であるブレイク・マスターズとJ・D・ヴァンスは2022年に上院議員選挙に出馬し、後者は当選している。

他方、リバタリアニズムはナショナリズム(または他のあらゆる形態の集団主義や連帯)には一貫して敵対的であり、リバタリアニズムの信奉者は右派に関連した多くの中核的な宗教的、国家的、文化的価値観を、日常的にバカにし、否定してみせる。これは明らかな矛盾なのだが、どちらも現在の世界が左翼的な文化的価値観に支配されていると感じており、それに対する反感で両者は連帯している。さらにヤービン、デイビッドソン、リース=モッグが主張するような不可避の技術トレンドに対して「ナショナリスト的なバックラッシュ」があっても、それは国民国家解体の加速要因になったり、その解体をいっしょに促進できたりすると見なす、「加速主義」的態度から連帯を容認している部分もあるようだ。

停滞と格差

ほとんどの自由民主主義国において、技術の未来をめぐる人々の想像力は、以上の2つのイデオロギーに(ずっと穏健な形ではあれ)かなり支配されてきた。そしてそれが過去半

世紀の大半にわたって技術投資の方向性を左右してきた。テクノクラートの話は目新しそうで、最近のAIの進歩で初めて生まれたように思えるかもしれない。だがAIをめぐる議論は、図2–0–Eが示すとおり1980年代からずっと熱狂的な盛り上がりを見せていたのだ。またリバタリアニズムはWeb3技術に関する最近の議論で注目度が高まってはいるが、そのピークはジョン・ペリー・バーロウの「サイバースペースの独立宣言[49]」、スティーヴンスンの小説、および『独立主権の個人[50]』の出版などの1990年代だったとすら言える。

これらのビジョンの過激な約束により、多くの人がITで劇的な経済成長と生産性向上、そしてそれと並行して約半世紀前に始まった、ほとんどの自由民主主義国における民営化、規制緩和、減税の波を期待するようになった。しかし、これらの約束が実現したとはとても言えない。その失敗の説明要因として、AIやWeb3の技術の方向性が重要な役割を果たしている可能性を示す経済分析が増えている。

経済成長の爆発的拡大が約束されていたというのに、過去半世紀の経済成長、特に生産性の成長は、かえって大きく下がった。図2–0–Fは、経済学者が技術の向上を最も包括的に測るときに使う指標「全要素生産性(TFP)」の米国での変化を、20世紀初頭から今日まで10年ごとの平均で示している。20世紀半ばの「黄金期」のTFP成長率は、私たちが「デジタル停滞期」と呼ぶ期間のほぼ2倍だ。このパターンは、ヨーロッパやアジアのほとんどの民主主義諸国ではさらに劇的で、数少ない例外は韓国と台湾だけだ。

Shows the far higher rate of Total Factor Productivity growth during the Golden Age of American economic growth from the 1920s to the 1970s than before and after.

図 2-0-F TFP (全要素生産性)で示した技術改善



出典: Gordon, The Rise and Fall of American Growth[51]

さらにこの停滞期は、米国で格差が劇的に拡大した時期でもある。図2–0–Gは、黄金期とデジタル停滞期における米国の平均所得成長率を、所得の百分位ごとに示している。黄金期には、所得成長率は分布全体でほぼ一定だが、最高所得者層では低下している。デジタル停滞期には、高所得者層の所得の伸びがずっと大きく、黄金期の平均レベルを超えたのは上位1%層のみで、そのなかでもごく少数のトップ集団がはるかに大きな稼ぎを得ており、全体の残り大半の所得増加はずっと低かった。

Shows that during the Golden Age, income growth was even across the income distribution, but lower at the very top, while duing the Digital Stagnation it was lower over all but high at the very top.

図 2-0-G 黄金期とデジタル停滞期の所得百分位ごとの平均所得成長率



出典:Saez and Zucman, “The Rise of Income and Wealth Inequality”[52]

過去半世紀とそれ以前の半世紀とを比べて、何がおかしくなってしまったのだろうか。経済学者はさまざまな要因を検討した。たとえば、市場支配力の高まりや労働組合の衰退、発明のタネが尽きて革新を起こすのが難しくなっていることなどだ。しかし、中でも2つの要因が重要だという説が有力になってきた。そしてその片方はテクノクラシー、片方はリバタリアニズムの影響と密接に結びついているのだ。前者は、技術の進歩が自動化に向かい、労働力を補う方向に向いていないこと、そして後者は、政策が産業発展やその関係の積極的な構築をやめ、すべてを自由市場任せにしてしまうようになったことだ。

最初の点については、最近の一連の論文で、アセモグルとパスクアル・レストレポらは、黄金期からデジタル停滞期に移行したときの技術進歩の方向変化を記述している。図2–0–Hはその結果をまとめたもので、労働の自動化(彼らはこれを「排除」と呼ぶ)と労働の補完(「再配置」)による生産性の経時的累積変化を示す[53]。黄金期には、再配置が排除とほぼ均衡し、労働者が得る所得の比率はおおむね一定だった。しかしデジタル停滞期には、排除がわずかに加速する一方で再配置は激減し、全体的な生産性の伸びが鈍化し、労働者の所得比率が大幅に減った。さらに彼らの分析によれば、排除は低技能労働者に集中するため、この不均衡で生じる格差拡大は悪化している。

Figure shows the cumulative overtime changes in productivity attributable to labor displacement v. reinstatement during the Golden Age and the Digital Stagnation, illustrating how much stronger displacement was during the Digital Stagnation.

2-0-H 黄金期とデジタル停滞期の労働の自動化(排除)と労働の補完(再配置)による生産性の累積変化



出典:Acemoglu and Restrepo, “Automation and New Tasks: How Technology Displaces and Reinstates Labor”[54]

この時期の停滞と不平等で「新自由主義」政策が果たした役割についてはかなりの論争があるし、読者諸賢もそれなりの意見をすでにお持ちだろう。また本書著者のひとりであるグレン・ワイルも、約10年ほど前に著書でこの議論をまとめている[55]。だから、ここでは深入りせず、拙著などの関連著作を提示するにとどめよう[56]。しかしこの時期を特徴づけるイデオロギーと政策の方向性は、明らかに資本主義市場経済の受容だった。そしてそこでは、技術がグローバル化しているからそれを受容するしかないという主張と、その結果として集団統治/行動は不可能なのだというリバタリアンイデオロギーの中核となる主張が密接に結びついていた。このように、おおむね失敗に終わった過去半世紀の技術と政策は、技術の分野ではテクノクラシー、政策の分野ではリバタリアニズムの支配が特徴だったわけだ。

もちろん過去半世紀にも、真に前向きな変革をもたらした技術革新は大量にあった――その変化は不均一で、時にはよくないものもあったのだが。1980年代には、パーソナルコンピュータが人間の創造性をかつてないほど高め、1990年代にはインターネットが、それまで想像もできなかったほどの距離を越えたコミュニケーションとつながりを可能にした。2000年代にはスマートフォンがこの2つの革命を統合し、ユビキタス化を実現した。しかし驚いたことに、こうした現代を代表するイノベーションのどれもが、テクノクラートやリバタリアンの物語にはうまくおさまらない。これらはすべて、AIではなく「知能拡張」またはIA(Intelligence Amplification)と呼ばれる、人間の創造性を拡張する技術だった[57]。しかし、一方でそれらは、既存の社会制度から離脱するツールとして構想されたわけではなく、市場取引、私有財産、秘密保持よりも、豊かなコミュニケーションとつながりを促進するものだったのだ。後で見るように、これらの技術は、テクノクラートやリバタリアンとはまったく違う伝統から生まれた。したがって、この時期に起こったいくつかの大きな技術的飛躍でさえ、こうした思想とはほとんど無関係か、むしろ対照的なものなのだ。

衰退する社会契約

しかし、テクノクラシーとリバタリアニズムの受容を取り巻く経済状況は、定量化が最も容易だから注目されやすい。もっと深刻で、陰湿で、最終的な害も大きいのは、民主主義とITの両方に対する社会的支持の基盤となっている自信、信仰、信頼の崩壊である。

民主主義制度への信頼は、特に過去15年間、すべての民主主義国で低下している。特にアメリカと開発途上の民主主義国での低下が顕著だ。アメリカでは、民主主義への不満は、過去30年間で少数派(25%未満)から多数派の意見に変わった[58]。これほどきちんと測定されているわけではないが、技術、特に大手IT企業への信頼も低下している。Public Affairs Council、 Morning Consult、 Pew Research Center、Edelman Trust Barometerなどの調査によると、IT部門は米国では、2010年代前半から中頃には経済界で最も信頼の高い産業部門だったが、現在では最も信頼の低い部門に転落している[59]

こうした懸念は、もっと広範囲に波及し、さまざまな社会制度に対する信頼の全般的な喪失につながっている。主要な制度(宗教組織、連邦政府、公立学校、メディア、法執行機関など)に高い信頼を寄せるアメリカ人の割合は、こうした調査が始まったとき(ほとんどの場合、黄金期の終わり頃)のおよそ半分にまで落ち込んでいる[60]。ヨーロッパの傾向はもっと穏やかだし、世界的にはばらつきがあるが、民主主義国における制度への信頼の低下という一般的な傾向があることは、広く受け入れられている[61]

私たちの未来を取り戻す

ITと民主主義の間の溝は広がる一方だ。この対立は双方に損害を与え、民主主義を弱体化させ、技術開発を遅らせている。さらに経済成長を鈍化させ、社会制度への信頼を損ない、不平等を助長する。これは必然などではない。自由民主主義諸国が集合的な選択により投資した、ある方向性を持つ技術の産物だ。そしてその選択は、民主的な理想とは相容れない未来についてのイデオロギーに煽られた結果なのだ。政治制度は技術の力を借りて繁栄するので、この経路を進み続ける限り民主主義も繁栄できない。

だがこの経路にこだわる必要はない。ITと民主主義は互いの最高の味方になれる。実際、大規模な「デジタル民主主義」の構想はまだ始まったばかりであり、それが多少なりとも実現されるためには、空前の技術が必要となる。それをこれから説明しよう。私たちの未来を想像しなおし、公共投資、研究計画、民間開発を転換すれば、その未来を実現できる。本書でその方法を示そう。まずは、他のどこよりもその未来が実現しつつある場所、民主主義とデジタル技術が提携し、さらに深く相互に絡み合っている場所の物語をお伝えしよう。


  1. Shoshanna Zuboff, The Age of Surveillance Capitalism (New York: Public Affairs, 2019): 513.〔『監視資本主義 人類の未来を賭けた闘い』ショシャナ・ズボフ著, 野中香方子訳, 東洋経済新報社, 2021〕 ↩︎

  2. Mar Andreessen, “The Techno-Optimist Manifesto”, Andreessen Horowitz Blog, October 16, 2023, https://a16z.com/the-techno-optimist-manifesto/. ↩︎

  3. Daron Acemoglu, and James A Robinson, The Narrow Corridor: States, Societies, and the Fate of Liberty. (New York: Penguin Books, 2020) 〔『自由の命運 国家、社会、そして狭い回廊』ダロン・アセモグル, ジェイムズ・A・ロビンソン著, 櫻井祐子訳, 早川書房, 2020〕 ↩︎

  4. Alexis De Tocqueville, Democracy in America, (Lexington, Ky: Createspace, 2013), https://www.gutenberg.org/files/815/815-h/815-h.htm 〔『アメリカの民主主義』アレキス・ド・トクヴィル著, 杉木謙三訳, 朋文社, 1957〕 ↩︎

  5. こうした関係は,市場で作られるものとは違う.市場での関係は,「普遍的」な通貨に基づく双方向的な取引的交換に基づいている.そうした通貨は,局所的な価値と信頼に基づく単位による価値を表すものだ. ↩︎

  6. Mary Gray, Out in the Country: Youth, Media, and Queer Visibility in Rural America (New York: NYU Press, 2009). また O’Day, Emily B., and Richard G. Heimberg, “Social Media Use, Social Anxiety, and Loneliness: A Systematic Review,” Computers in Human Behavior Reports 3, no. 100070 (January 2021), https://doi.org/10.1016/j.chbr.2021.100070; さらにまた Hunt Allcott, Luca Braghieri, Sarah Eichmeyer, and Matthew Gentzkow, “The Welfare Effects of Social Media,” American Economic Review 110, no. 3 (March 1, 2020): 629–76. https://doi.org/10.1257/aer.20190658 も参照. ↩︎

  7. Siddharth Suri, and Mary L Gray, Ghost Work: How to Stop Silicon Valley from Building a New Global Underclass, (Boston: Houghton Mifflin Harcourt, 2019). David H. Autor, “Why Are There Still So Many Jobs? The History and Future of Workplace Automation”, Journal of Economic Perspectives 29, no. 3 (2015): 3-30, https://www.aeaweb.org/articles?id=10.1257%2Fjep.29.3.3\&source=post\_page. ↩︎

  8. Steven Levitsky, and Daniel Ziblatt. How Democracies Die, (New York: Broadway Books, 2018).; また Yascha Mounk, The People vs. Democracy: Why Our Freedom Is in Danger and How to Save It, (Cambridge, Massachusetts: Harvard University Press, 2018); Cass Sunstein, #Republic: Divided Democracy in the Age of Social Media, (Princeton, New Jersey: Princeton University Press, 2017; Kathleen Jamieson, and Joseph Cappella, Echo Chamber: Rush Limbaugh and the Conservative Media Establishment, (Oxford, New York: Oxford University Press, 2008). Levi Boxell, Matthew Gentzkow and Jesse M. Shapiro, “Greater Internet Use is Not Associated with Faster Growth in Political Polarization among US Demographic Groups” Proceedings of the National Academy of Sciences 114, no. 40: 10612-10617. Levi Boxell, Matthew Gentzkow and Jesse M. Shapiro, “Cross-Country Trends in Affective Polarization” Review of Economics and Statistics Forthcoming も参照. ↩︎

  9. Alp Simsek, “The Macroeconomics of Financial Speculation,” Annual Review of Economics 13, no. 1 (May 11, 2021), https://doi.org/10.1146/annurev-economics-092120-050543. ↩︎

  10. Ben McKenzie, and Jacob Silverman, Easy Money: Cryptocurrency, Casino Capitalism, and the Golden Age of Fraud, (New York: Abrams, 2023); “Financial Stability Board, “Regulation, Supervision and Oversight of Crypto-Asset Activities and Markets Consultative Document,” 2022, https://www.fsb.org/wp-content/uploads/P111022-3.pdf; Greg Lacurci, “Cryptocurrency Poses a Significant Risk of Tax Evasion,” CNBC, May 31, 2021, https://www.cnbc.com/2021/05/31/cryptocurrency-poses-a-significant-risk-of-tax-evasion.html; Arianna Trozze, Josh Kamps, Eray Akartuna, Florian Hetzel, Bennett Kleinberg, Toby Davies, and Shane Johnson, “Cryptocurrencies and Future Financial Crime,” Crime Science 11, no. 1 (January 5, 2022), https://doi.org/10.1186/s40163-021-00163-8; Baer, Katherine, Ruud De Mooij, Shafik Hebous, and Michael Keen, “Crypto Poses Significant Tax Problems—and They Could Get Worse,” IMF, July 5, 2023, https://www.imf.org/en/Blogs/Articles/2023/07/05/crypto-poses-significant-tax-problems-and-they-could-get-worse; and “Crypto-Assets: Implications for Financial Stability, Monetary Policy, and Payments and Market Infrastructures.” ECB Occasional Paper, no. 223 (May 17, 2019), https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract\_id=3391055. ↩︎

  11. Tristan Harris, “Ethics for Designers — How Technology Hijacks People’s Minds — from a Magician and Google’s Design Ethicist,” Ethics for Designers, March 4, 2017, https://www.ethicsfordesigners.com/articles/how-technology-hijacks-peoples-minds; https://www.youtube.com/watch?v=7LqaotiGWjQ; および Daniel Schmachtenberger, “Explorations on the Future of Civilization,” n.d. https://civilizationemerging.com/. ↩︎

  12. Shoshana Zuboff, The Age of Surveillance Capitalism: The Fight for a Human Future at the New Frontier of Power, (New York, NY: Public Affairs, 2019); Cathy O’neil, Weapons of Math Destruction: How Big Data Increases Inequality and Threatens Democracy, (New York: Crown, 2016); Evangelos Simoudis, The Big Data Opportunity in Our Driverless Future. (Menlo Park, Ca: Corporate Innovators, Llc, 2017); Philippe Aghion, Benjamin Jones, and Charles Jones, “Artificial Intelligence and Economic Growth,” 2017, https://web.stanford.edu/\~chadj/AI.pdf; Ford, Martin, Rise of the Robots: Technology and the Threat of a Jobless Future, (New York: Basic Books, 2015); Kai-Fu Lee, AI Superpowers China, Silicon Valley, and the New World Order, (Boston: Houghton Mifflin Harcourt, 2018); David Brin, The Transparent Society: Will Technology Force Us to Choose between Privacy and Freedom? (New York: Basic Books, 1999); Safiya Noble, Algorithms of Oppression: How Search Engines Reinforce Racism (New York: New York University Press, 2018); および Virginia Eubanks, Automating Inequality: How High-Tech Tools Profile, Police, and Punish the Poor, (New York: St. Martin’s Press, 2018). ↩︎

  13. Meredith Broussard. Artificial Unintelligence: (Cambridge, Massachusetts: The MIT Press, 2018), https://doi.org/10.7551/mitpress/11022.001.0001; Cathy O’neil, Weapons of Math Destruction: How Big Data Increases Inequality and Threatens Democracy, (New York: Crown, 2016); Ruha Benjamin, “Race after Technology: Abolitionist Tools for the New Jim Code,” Social Forces 98, no. 4 (December 23, 2019), https://doi.org/10.1093/sf/soz162; Victor Margolin, The Politics of the Artificial: Essays on Design and Design Studies, (Chicago: The University of Chicago Press, 2002). ↩︎

  14. Daron Acemoglu, and Pascual Restrepo, “The Race between Man and Machine: Implications of Technology for Growth, Factor Shares, and Employment,” American Economic Review 108, no. 6 (June 2018): 1488–1542. https://doi.org/10.1257/aer.20160696; Jonathan Haskel, and Stian Westlake, “Capitalism without Capital: The Rise of the Intangible Economy (an Excerpt),” Journal of Economic Sociology 22, no. 1 (2021): 61–70, https://doi.org/10.17323/1726-3247-2021-1-61-70; Ajay Agrawal, Joshua Gans, Avi Goldfarb, and Catherine Tucker, The Economics of Artificial Intelligence, (Illinois: University of Chicago Press, 2024). ↩︎

  15. Jan De Loecker, Jan Eeckhout, and Gabriel Unger. “The Rise of Market Power and the Macroeconomic Implications,” The Quarterly Journal of Economics 135, no. 2 (January 23, 2020): 561–644, https://doi.org/10.1093/qje/qjz041; John Barrios, Yael V. Hochberg, and Hanyi Yi. “The Cost of Convenience: Ridehailing and Traffic Fatalities,” SSRN Electronic Journal, 2019, https://doi.org/10.2139/ssrn.3361227; and Tali Kristal, “The Capitalist Machine: Computerization, Workers’ Power, and the Decline in Labor’s Share within U.S. Industries,” American Sociological Review 78, no. 3 (May 29, 2013): 361–89. https://doi.org/10.1177/0003122413481351. ↩︎

  16. Kai-Fu Lee, AI Superpowers China, Silicon Valley, and the New World Order, (Boston Houghton Mifflin Harcourt, 2018); Bruce Dickson, The Dictator’s Dilemma: The Chinese Communist Party’s Strategy for Survival, (Oxford, England, New York: Oxford University Press, 2016); Nick Couldry, and Ulises Mejias, “Data Colonialism: Rethinking Big Data’s Relation to the Contemporary Subject,” Television & New Media 20, no. 4 (September 2, 2019): 336–49. Steven Feldstein, The Rise of Digital Repression: How Technology Is Reshaping Power, Politics, and Resistance, (New York: Oxford University Press, 2021). ↩︎

  17. Richard Wike and Jannell Fetterolf, “Global Public Opinion in an Era of Democratic Anxiety” Pew Trust Magazine May 27, 2022. 皮肉なことだが,国家が技術統制能力をあまり持たない,脆弱な民主主義国では,カオス(転覆的な技術を通じた既存秩序の崩壊)は民主主義に味方することもある. 2010年代に北アフリカを席巻したアラブの春から, 2020年ナイジェリアの#EndSARS運動まで,専制主義国や脆弱な民主主義国は, SNSに明るく,金融技術(フィンテック)を活用し,暗号資産に後押しされた若い市民階級が台頭し,そうした技術を使って専制主義国制度に挑んでいる.こうした転覆者たちはIT企業のアルゴリズムに支援を受けている.ただし,そうした社会運動の目的がそうした企業の商業利益と整合している限りにおいてのことではある. Michael Etter and Oana Albu, “Activists in the Dark: Social Media Algorithms and Collective Action in Two Social Movement Organizations.” Organization 28, no. 1 (September 29, 2020): 135050842096153. https://doi.org/10.1177/1350508420961532. そうした運動は影響力の強い創業者の明示的な肯定と支援により促進されることもある. Jack Dorsey (@Jack) “Donate via #Bitcoin to help #EndSARS NG…,” X, October 14, 2020, 10.05pm, https://twitter.com/jack/status/1316485283777519620? こうした介入は確かに民主主義運動を支援し,そうでなくても抑圧されていた市民たちの声を増幅する.しかしそうした外国からの介入は,文脈についての乏しい理解に陥りがちで,分断をもたらしかねないうえ,アフリカ,ひいてはグローバルサウスにおける国家独立主権に対する,グローバル企業などの非国家アクターたちの影響力を改めて示すものでもある. Ohimai Amaize, How Twitter Amplified the Divisions That Derailed Nigeria’s #EndSARS Movement, Slate Magazine, April 20, 2021, https://slate.com/technology/2021/04/endsars-nigeria-twitter-jack-dorsey-feminist-coalition.html. ↩︎

  18. 欧州委員会はオープンソースソフトウェア(OSS)の影響に関する調査を発表した. EUにおける厳しいデータ統制は競争とイノベーションの欠如をもたらし,市場のリスクも高めた. しかし多くの東欧諸国ではイノベーションの足音に合わせてOSSへの投資増大が見られる. 西側がデジタル技術への投資を維持保全できないと,将来的に大きな損失に直面する. たとえばウクライナとロシアの戦争を見るとデジタルOSSの重要性がわかる. ヨーロッパのデジタル的な立場について詳しくは “Open Technologies for Europe’s Digital Decade,” OpenForumEurope, n.d, https://openforumeurope.org/を参照. ↩︎

  19. Google Ngram Viewer, op. cit. ↩︎

  20. “Views of Big Tech Worsen; Public Wants More Regulation,” Gallup.com, February 18, 2021, https://news.gallup.com/poll/329666/views-big-tech-worsen-public-wants-regulation.aspx; ただし以下も参照: “Europeans Strongly Support Science and Technology according to New Eurobarometer Survey,” European Commission, September 23, 2021, https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/IP\_21\_4645. ↩︎

  21. Fredrik Erixon, and Björn Weigel, The Innovation Illusion: How so Little Is Created by so Many Working so Hard, (New Haven: Yale University Press, 2017) および Robert J. Gordon, The Rise and Fall of American Growth: The U.S. Standard of Living since the Civil War, (Princeton; Oxford Princeton University Press, 2017) 〔『アメリカ経済 成長の終焉』ロバート・J・ゴードン著, 高遠裕子, 山岡由美訳, 日経BP社, 2018〕参照. また以下も参照: Carl Benedikt, and Michael Osborne, “The Future of Employment: How Susceptible Are Jobs to Computerisation,” The Oxford Martin Programme on Technology and Employment, 2013. https://www.oxfordmartin.ox.ac.uk/downloads/academic/future-of-employment.pdf. Erik Brynjolfsson, and Andrew McAfee, The Second Machine Age: Work, Progress, and Prosperity in a Time of Brilliant Technologies, (New York: W.W. Norton & Company, 2014). Calestous Juma. Innovation and Its Enemies: Why People Resist New Technologies. (New York: Oxford University Press, 2019). Paul De Grauwe, and Anna Asbury. The Limits of the Market: The Pendulum between Government and Market. Oxford: Oxford University Press, 2019. データ出所は “Gross Domestic Spending on R&D,” 2022. https://data.oecd.org/rd/gross-domestic-spending-on-r-d.htm.; OECD. “OECD Main Science and Technology Indicators,” OECD, March 2022. https://web-archive.oecd.org/2022-04-05/629283-msti-highlights-march-2022.pdf.; および “R&D Expenditure,” Eurostat, n.d., https://ec.europa.eu/eurostat/statistics-explained/index.php?title=R%26D\_expenditure\&oldid=590306. ↩︎

  22. Gary Anderson and Francisco Moris, “Federally Funded R&D Declines as a Share of GDP and Total R&D”, National Center for Science and Engineering Statistics NSF 23-339 (Alexandria, VA: National Science Foundation, 2023) https://ncses.nsf.gov/pubs/nsf23339 ↩︎

  23. Julien Mailland and Kevin Driscoll, Minitel: Welcome to the Internet (Cambridge, MA: MIT Press, 2017) 参照. たとえば公共の利益があるオープンソースのコードですら,ほとんどは民間アクターにしか投資を受けていない. ただし最近ではアメリカ政府は, code.govのローンチによりこの部門を支援しようという多少の努力は行っている. ↩︎

  24. “Transcript: Ezra Klein Interviews Sam Altman,” The New York Times, June 11, 2021, sec. Podcasts. https://www.nytimes.com/2021/06/11/podcasts/transcript-ezra-klein-interviews-sam-altman.html. ↩︎

  25. Emily Crawford, “Made in China 2025: The Industrial Plan That China Doesn’t Want Anyone Talking About,” Frontline PBS, May 7, 2019. https://www.pbs.org/wgbh/frontline/article/made-in-china-2025-the-industrial-plan-that-china-doesnt-want-anyone-talking-about/; Ramnath Reghunadhan, “Innovation in China: Challenging the Global Science and Technology System,” Asian Affairs 50, no. 4 (August 8, 2019): 656–57. https://doi.org/10.1080/03068374.2019.1663076. United Arab Emirates National Strategy for Artificial Intelligence (2018) available at https://ai.gov.ae/wp-content/uploads/2021/07/UAE-National-Strategy-for-Artificial-Intelligence-2031.pdf. ↩︎

  26. 以下を参照:Robert Mcchesney, Digital Disconnect: How Capitalism Is Turning the Internet against Democracy, (New York; London: The New Press, 2013). See also Matthew Hindman, The Internet Trap: How the Digital Economy Builds Monopolies and Undermines Democracy, (Princeton, New Jersey: Princeton University Press, 2018); Adam Segal, The Hacked World Order: How Nations Fight, Trade, Maneuver, and Manipulate in the Digital Age, (New York: Publicaffairs, September, 2017); Richard Stengel, Information Wars: How We Lost the Global Battle against Disinformation and What We Can Do about It, (St. Louis: Grove Press Atlantic, 2020); Tim Wu, The Attention Merchants: The Epic Scramble to Get inside Our Heads, (New York: Vintage Books, 2017). ↩︎

  27. United Nations Department of Economic and Social Affairs. E-Government Knowledge Database, 2022 available at https://publicadministration.un.org/egovkb/Data-Center ↩︎

  28. Sara Perez, “Amid Twitter chaos, Mastodon grew donations 488% in 2022, reached 1.8M monthly active users”, Tech Crunch, October 2, 2023 at https://techcrunch.com/2023/10/02/amid-twitter-chaos-mastodon-grew-donations-488-in-2022-reached-1-8m-monthly-active-users/?guccounter=1\&guce\_referrer=aHR0cHM6Ly93d3cuZ29vZ2xlLmNvbS8\&guce\_referrer\_sig=AQAAAB4elMpT6Z4bRh0CgGahv6StNV0XxSqowWdySLswyxLtHeVqB\_vtEy26USK2og\_vDxXf02LLxZMR-vLz1iHo9IJ5lX8yiJrVLNdyReDPWVnFG-slFZv3Jdf4KK\_EYXVkQksyWSniRIVgdaHf6HHLIfnHVh25XloIecCX760j8hcQ\#:\~:text=But unlike investor-backed startups,had at year-end 2021. ↩︎

  29. Atlantic Council, “Central Bank Digital Currency Tracker,” https://www.atlanticcouncil.org/cbdctracker/ ↩︎

  30. Rogier Creemers, Hunter Dorwart, Kevin Neville, Kendra Schaefer, Johanna Costigan, and Graham Webster, “Translation: 14th Five-Year Plan for National Informatization Dec. 2021.” DigiChina, January 24, 2022, https://digichina.stanford.edu/work/translation-14th-five-year-plan-for-national-informatization-dec-2021/ 参照. ↩︎

  31. Josh O’Kane, Sideways: The City Google Couldn’t Buy (Toronto: Random House Canada, 2022). ↩︎

  32. たとえば以下を参照: John, Alun, Samuel Shen, and Tom Wilson. “China’s Top Regulators Ban Crypto Trading and Mining, Sending Bitcoin Tumbling.” Reuters, September 24, 2021, https://www.reuters.com/world/china/china-central-bank-vows-crackdown-cryptocurrency-trading-2021-09-24/. ↩︎

  33. Gleb Stolyarov, and Gabrielle Tétrault-Farber, “‘Face Control’: Russian Police Go Digital against Protesters,” Reuters, February 11, 2021, https://www.reuters.com/article/us-russia-politics-navalny-tech-idUSKBN2AB1U2. See also Mark Krutov, Maria Chernova, and Robert Coalson, “Russia Unveils a New Tactic to Deter Dissent: CCTV and a ‘Knock on the Door,’ Days Later,” Radio Free Europe/Radio Liberty, April 28, 2021, https://www.rferl.org/a/russia-dissent-cctv-detentions-days-later-strategy/31227889.html. ↩︎

  34. Anastasiia Kruope, “Russia Uses Facial Recognition to Hunt down Draft Evaders,” Human Rights Watch, October 26, 2022, https://www.hrw.org/news/2022/10/26/russia-uses-facial-recognition-hunt-down-draft-evaders. ↩︎

  35. Neal Stephenson, Snow Crash (New York: Bantam, 1992).〔『スノウ・クラッシュ』ニール・スティーヴンスン著, 日暮雅通訳, 早川書房, 2022〕 ↩︎

  36. Isaac Asimov, I, Robot (New York: Gnome Press: 1950) 〔『われはロボット』アイザック・アシモフ著, 小尾芙佐訳, 早川書房, 1963〕. Ian Banks, Consider Phlebas (London: Macmillan, 1987). Ray Kurzweil, The Age of Spiritual Machines (New York: Viking, 1999).〔『スピリチュアル・マシーン コンピュータに魂が宿るとき』レイ・カーツワイル著, 田中三彦, 田中茂彦訳, 翔泳社, 2001〕 Nick Bostrom, Superintelligence (Oxford, UK: Oxford University Press, 2014) .〔『スーパーインテリジェンス 超絶AIと人類の命運』ニック・ボストロム 著, 倉骨彰訳, 日本経済新聞出版, 2017〕 ↩︎

  37. Ursula K. LeGuin, The Dispossessed: An Ambiguous Utopia (New York: Harper & Row, 1974) .〔『所有せざる人々』アーシュラ・K・ル・グィン著, 佐藤高子訳, 早川書房, 1980〕 Octavia E. Butler, Wild Seed (New York: Doubleday, 1980). Marge Piercy, Woman on the Edge of Time (New York: Knopf, 1976). Karl Schroeder, “Degrees of Freedom” in Ed Finn and Kathryn Cramer eds. Hieroglyph: Stories & Visions for a Better Future (New York: William Morrow, 2014). Karl Schroeder, Stealing Worlds (New York: Tor Books, 2019) Annalee Newitz, The Future of Another Timeline (New York: Tor Books, 2019). Cory Doctorow, Walkaway (New York: Tor Books, 2017). Malka Older, Infomocracy (New York: Tor Books, 2016). Naomi Alderman, The Power, (New York:Viking, 2017) Cixin Liu, The Three-Body Problem (New York: Tor Books, 2014) .〔『三体』劉慈欣著, 大森望, 光吉さくら, ワンチャイ訳, 立原透耶監修, 早川書房, 2019〕Paolo Bacigalupi, The Windup Girl (New York: Start Publishing LLC, 2009). 〔『ねじまき少女』パオロ・バチガルピ著, 田中一江, 金子浩訳, 早川書房, 2011〕 Neal Stephenson, The Diamond Age (New York: Spectra, 2003).〔『ダイヤモンド・エイジ』ニール・スティーヴンスン著, 日暮雅通訳, 早川書房, 2006〕.William Gibson, The Peripheral (New York: Berkley, 2019). ↩︎

  38. Jacques Ellul, The Technological Society (New York: Vintage Books, 1964) .〔『技術社会』ジャック・エリュール著, 島尾永康, 竹岡敬音訳, すぐ書房, 1975〕 Paul Hoch, Donald MacKenzie, and Judy Wajcman, “The Social Shaping of Technology,” Technology and Culture 28, no. 1 (January 1987): 132 https://doi.org/10.2307/3105489. Andrew Pickering, “The Cybernetic Brain: Sketches of Another Future,” Kybernetes 40, no. 1/2 (March 15, 2011) https://doi.org/10.1108/k.2011.06740aae.001. Deborah Douglas, Wiebe E. Bijker, Thomas P. Hughes, and Trevor Pinch, The Social Construction of Technological Systems: New Directions in the Sociology and History of Technology (Cambridge, Massachusetts: MIT Press, 2012), 以下で読める: https://www.jstor.org/stable/j.ctt5vjrsq. Charles C. Mann, 1491: New Revelation of the Americas Before Columbus (New York: Knopf, 2005).〔『1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見』チャールズ・C・マン著, 布施由紀子訳, NHK出版, 2007〕 ↩︎

  39. Daron Acemoglu and Simon Johnson, Power and Progress: Our Thousand-Year Struggle over Technology and Prosperity (New York: Public Affairs, 2023) .〔『技術革新と不平等の1000年史』ダロン・アセモグル, サイモン・ジョンソン著, 鬼澤忍, 塩原通緒訳, 早川書房, 2023〕 ↩︎

  40. Nestor Maslej, Loredana Fattorini, Erik Brynjolfsson, John Etchemendy, Katrina Ligett, Terah Lyons, James Manyika, Helen Ngo, Juan Carlos Niebles, Vanessa Parli, Yoav Shoham, Russell Wald, Jack Clark, and Raymond Perrault, “The AI Index 2023 Annual Report,” AI Index Steering Committee, Institute for Human-Centered AI, Stanford University, Stanford, CA, April 2023. ↩︎

  41. Pitchbook, “Crypto Report” Q4 2023 at https://pitchbook.com/news/reports/q4-2023-crypto-report. ↩︎

  42. 研究諮問企業Gartnerの報告によれば, AIに対する政府支出は全世界で2021年に370億ドルとなり,対前年比で22.4%増加.AI投資では中国が筆頭だ.中国企業は2017年に250億ドルを投資したが,アメリカは97億ドルだった. 2021年にアメリカ上院は半導体研究開発への520億ドルを含む, 2500億ドルの法案を可決し,これは米国のAI能力を高めると期待されている.さらに同年, EUは人工知能,サイバーセキュリティ,スーパーコンピュータへの83億の投資を発表した. EUのデジタル10年計画の一環である. 2021年に日本銀行は中央銀行デジタル通貨(CBDC)の実験を開始し,中国人民銀行は数都市でデジタル人民元試験プログラムを開始した. ↩︎

  43. Google nGrams viewer https://books.google.com/ngramsから導出. ↩︎

  44. Sam Altman, “Moore’s Law for Everything”, March 16, 2021 https://moores.samaltman.com/. ↩︎

  45. Nick Bostrom, Deep Utopia: Life and Meaning in a Solved World (Washington, DC: Ideapress, 2024). ↩︎

  46. Ayn Rand, Atlas Shrugged (New York: Random House, 1957) .〔『肩をすくめるアトラス』アイン・ランド著, 脇坂あゆみ訳, ビジネス社, 2004.〕 ↩︎

  47. Neal Stephenson, Cryptonomicon (New York: Avon, 1999) .〔『クリプトノミコン』ニール・スティーヴンスン著, 中原尚哉訳, 早川書房, 2002〕 ↩︎

  48. James Dale Davidson and Lord William Rees-Mogg, The Sovereign Individual: Mastering the Transition to the Information Age (New York: Touchstone, 1999). Mencius Moldbug, Unqualified Reservations https://www.unqualified-reservations.org/. Balaji Srinivasan, The Network State (Self-published, 2022) available at https://thenetworkstate.com/. Bronze Age Pervert, Bronze Age Mindset (Self-published, 2018). ↩︎

  49. The Electronic Frontier Foundation, “A Declaration of the Independence of Cyberspace,” https://www.eff.org/cyberspace-independence. ↩︎

  50. The Sovereign Individual, op. cit ↩︎

  51. Robert J. Gordon, op. cit. ↩︎

  52. Emmanuel Saez and Gabriel Zucman, “The Rise of Wealth and Inequality in America: Evidence from Distributional Macroeconomic Accounts,” Journal of Economic Perspectives 34, no. 4 (2020): 3-26. ↩︎

  53. Daron Acemoglu, and Pascual Restrepo, “Automation and New Tasks: How Technology Displaces and Reinstates Labor.” Journal of Economic Perspectives 33, no. 2 (May 2019): 3–30. https://doi.org/10.1257/jep.33.2.3. 黄金期とデジタル停滞の時期をどこで厳密に切るかは研究ごとに異なるが,常に1970年代か1980年代のどこかである. ↩︎

  54. Ibid. ↩︎

  55. Eric A. Posner, E. Glen Weyl, Radical Markets: Uprooting Capitalism and Democracy for a Just Society, (Princeton: Princeton University Press, 2018).〔『ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀』エリック・A・ポズナー, E・グレン・ワイル著, 安田洋祐監訳, 遠藤真美訳, 東洋経済新報社, 2019〕 ↩︎

  56. Thomas Philippon, The Great Reversal: How America Gave up on Free Markets, (Cambridge, Massachusetts: The Belknap Press Of Harvard University Press, 2019); Jonathan Tepper, The Myth of Capitalism: Monopolies and the Death of Competition, New York: Harper Business, 2018). ↩︎

  57. John Markoff, Machines of Loving Grace: The Quest for Common Ground Between Humans and Robots (New York: Ecco, 2015). ↩︎

  58. Fred Lewsey, “Global Dissatisfaction with Democracy at a Record High,” University of Cambridge, January 29, 2020, https://www.cam.ac.uk/stories/dissatisfactiondemocracy. ↩︎

  59. 2021年Edelman Trust Barometerによると,世界の回答者のうちITを信頼できる情報源だとしたのはたった57%だった. これは前年の調査から4ポイント減少となる. Pew Research Centerの2020年調査では,アメリカ人の72%はソーシャルメディア企業が,人々の見るニュースに対して持つ力と影響が大きすぎると考えていた.さらに回答者の51%は,政治的な党派化に技術が果たす役割について,非常に/ある程度は懸念していた.オックスフォード大学AIガバナンスセンターの2019年調査は, IT企業が一般に信頼できると信じているアメリカ人はたった33%だという結果を出した. Ipsos MORIによる9カ国における9000人の調査では,ソーシャルメディア企業が自分たちのデータを責任ある形で扱うと信頼している回答者はたった30%だった. こうしたデータポイントは,社会におけるITの役割について,民主主義への影響も含め,疑念と懸念が高まっていることを示唆する. Richard Wike, Laura Silver, Janell Fetterolf, Christine Huang, Sarah Austin, Laura Clancy, and Sneha Gubbala. “Social Media Seen as Mostly Good for Democracy across Many Nations, but U.S. Is a Major Outlier,” Pew Research Center, December 6, 2022, https://www.pewresearch.org/global/2022/12/06/social-media-seen-as-mostly-good-for-democracy-across-many-nations-but-u-s-is-a-major-outlier/ 参照. Pew Researchによると,一般市民はソーシャルメディアを,政治的な生活において建設的なものでもあり,破壊的なものでもあると見ている.全体として,ほとんどの人はそれが本当に民主主義にプラスの役割を果たしていると思っている. アンケートを行った国では,平均で57%がソーシャルメディアは民主主義にとって,どちらかといえば良いと答え,悪いと言ったのは35%だった.しかしこの問題については国ごとに大きな差があり,アメリカは明らかに例外的だ. アメリカの成人でソーシャルメディアが民主主義に良いと考える人はたった34%であり,悪影響をもたらしたと考える人は64%となる. 実はアメリカは多くの指数で例外的で,ソーシャルメディアが分断を煽ると考えている人が多数派となる. OAIC, “Australian Community Attitudes to Privacy Survey 2020 Prepared for the Office of the Australian Information Commissioner by Lonergan Research,” 2020, https://www.oaic.gov.au/\_\_data/assets/pdf\_file/0015/2373/australian-community-attitudes-to-privacy-survey-2020.pdf 参照. 最近のオーストラリアの調査では,多くの消費者回答者(58%)は,企業が集めたデータで何をするか理解していないと述べ, 49%は知識や時間不足と必要なプロセスの複雑さのため,自分のデータを保護できないと感じている(OAIC, 2020). 「Twitter, Facebook, YouTube, Instagram は情報の急速かつ広範な拡散に重要である」とWHOによると系統的なレビューは述べる. World Health Organization, “Infodemics and Misinformation Negatively Affect People’s Health Behaviours,” September 1, 2022. https://www.who.int/europe/news/item/01-09-2022-infodemics-and-misinformation-negatively-affect-people-s-health-behaviours–new-who-review-finds 参照. ソーシャルメディア上の誤情報の影響は「科学知識の間違った解釈の広がり,意見の極端化,恐怖とパニックのエスカレート,医療情報へのアクセス低下」がある. Janna Anderson, and Lee Rainie, “Concerns about Democracy in the Digital Age,” Pew Research Center, February 21, 2020. https://www.pewresearch.org/internet/2020/02/21/concerns-about-democracy-in-the-digital-age/ 参照. ↩︎

  60. Gallup, “Confidence in Institutions,” n.d., https://news.gallup.com/poll/1597/confidence-institutions.aspx. ↩︎

  61. United Nations Department of Economic and Social Affairs, “Trust in Public Institutions: Trends and Implications for Economic Security,” n.d., https://social.desa.un.org/publications/trust-in-public-institutions-trends-and-implications-for-economic-security. また Marta Kolczynska, Paul-Christian Bürkner, Lauren Kennedy, and Aki Vehtari, “Modeling Public Opinion over Time and Space: Trust in State Institutions in Europe, 1989-2019,” SocArXiv, August 11, 2020. https://doi.org/10.31235/osf.io/3v5g7も参照. ↩︎