インパクト · 6-0
⿻から現実へ
⿻は、今後10年間で、社会のほぼすべての分野を変革する可能性がかなり高い。私たちが検討している例は次のとおり。
①職場。経済産出を10%増加させ、経済成長率を1ポイント引き上げられるだろう。
②保健。人間の寿命を20年延ばせるだろう。
③メディア。SNSによって生じた溝を修復し、持続可能な資金を提供し、参加を拡大し、報道の自由を大幅に拡大できる。
④環境。私たちが直面している深刻な環境問題のほとんどに対処するうえで中核となり、従来の「グリーン」テクノロジーよりもさらに重要となる。
⑤学習。現在の学校教育の線形構造を覆し、はるかに多様で柔軟な生涯学習の道筋を可能に。
ここでの詳述は避けるが、エネルギー分野を含む他の幅広い分野でも根本的な影響があるだろう。化石燃料の「狩猟採集」モデルから太陽エネルギーを直接利用する「農業」モデルへの根本的な移行を支援する可能性がある。
本書のこれまでの部分では、幅広い社会システムを変革する壮大なビジョンを描いてきた。しかし、そうした未来の話がどんなに想像力豊かなものでも、現実の人々がいま実感している切実なニーズとは無縁で、総合的な変化をもたらしても具体的なニーズ対処方法からほど遠いと思われたら、すぐに非現実的で、空虚なインチキだと思われる。さらに、これまでのレトリックの多くは、「民主主義」などの広範な社会システムに焦点を当てており、刺激的ではあるものの、ほとんどの人々の生活実感や主体性の範囲とはかけ離れている印象がある。
そこでこの部分では、考えられる⿻の影響を、さまざまな社会活動やセクターの市民、労働者、リーダーが直面している具体的な課題にまで落とし込んでみよう。個別セクターに移る前に、この節では、⿻「変化の理論」の大枠を描き、これらのセクターが出発点として最適であることを示し、そうした分野での実験が直接的な価値を持ち、⿻の体系的かつグローバルなエンパワーメントに広がるかもしれない理由を示そう。
社会革命のグラフ構造
急進的な社会および技術の変化は、人間の想像力にとって抗しがたい魅力があるが、ビートルズが社会的なバラード『レボリューション』で嘆いたように、悲劇に終わることも多い。政治学者のスティーブン・レヴィツキーとルーカン・ウェイの最近の分析では、20世紀に起きた暴力的な革命で、長続きする民主的な政府につながったものはひとつもなかった[1]。それでも、20世紀の情報通信技術の劇的な進歩から、過去300年間における世界各地での自由で民主的な政府樹立まで、人類の歴史には良い方向への劇的な変化も多かったことは、衆目の一致するところだ。
平和的で有益でありながら劇的な進歩を可能にするものは何か? 社会哲学者ハンナ・アーレントは、このテーマに関する古典的な論文で、アメリカ革命とフランス革命を比べた[2]。アメリカ革命は、移民たちが古くからの理想(自分たちの過去と、最近判明したように、先住民たちの理想の両方)を探求し、新しい、そしてしばしば危険な環境で共に生活を築くことを軸とした、ローカルな民主主義の実験から生まれたと彼女は主張する[3]。彼らはアイデアを交換し、当時出回っていた関連概念をもとに思想を構築し、イギリスで実践されていた方法とは対照的な、統治についてもっと一般的な概念を発見したという大まかな結論に達したのだ。これにより、アーレントが「権威」と呼ぶもの(「4–2団体と⿻公衆」で正統性と呼んだようなもの)が、民主共和制政府への期待に与えられた。イギリスに対する独立戦争により、この権威を持った組織は、矛盾、偽善、失敗はあれど、社会改革の永続的で進歩的な例となった。
一方、フランス革命は、物質的条件に対する民衆の広範な不満から生まれたもので、彼らは権力を掌握してすぐに、その不満を解消しようとした。別の統治形態の可能性が権威を獲得するのを待つことはおろか、それを詳述しようとさえしなかった。これは劇的な社会的変革をもたらしたが、その多くはすぐに覆されたし、重大な暴力を伴うこともあった。この意味で、フランス革命は見方が極端に分かれるし、広く議論はされているが、中核的な指向の多くは達成できなかった。フランス革命は、権威を築くプロセスよりも、差し迫った物質的要求とそれを達成する権力を優先させたため、新しいシステムの社会的正当性を築く繊細なプロセスに負担をかけすぎたのだ。フランス革命はパンを要求し、それを手に入れた。アメリカ革命は自由を要求し、それを手に入れたのだ。
アーレントの例は政治面についてだが、進化生物学から言語学まで、幅広い分野のイノベーションに関する文献と共鳴している。結果の細部は違うが、そうした研究はいずれも、劇的なイノベーションが生まれる環境は内部的には密につながり、外部的には緩くつながっている多様な「集団」(言語的、経済的、生物学的など)が相互作用する場なのだと示している[4]。そうした環境があれば、イノベーションは必要な規模を獲得し、その回復力を示し、そして普及する。つながりがもっと強い構造や中央集権的な構造は、変化が純利益をもたらす場合が少ないので、イノベーションを抑制したり、危険視したりする。だが分断された構造では、イノベーションは普及できない。
この指摘は直感的に納得できるものだが、科学や社会科学の「ランダム化対照実験」についての文献やハイテクビジネスの「ブリッツスケーリング」の文献でますます論じられている実験やイノベーションのモデルとはまったく対照的なものだ。これらを順に検討しよう。ランダム化対照実験は、主に個人の非伝染性の医療および認知心理学の応用から派生したもので、個人を含む社会的サブグループに対する治療法のランダム化試験を参考にしている。この手法でその治療法は承認が得られ、COVID–19ワクチンのように、すべての適応患者にその治療法が迅速に処方できるのだ[5]。こうした手法は、社会科学、特に開発経済学と貧困削減に関する関連するさまざまな応用研究でますます影響力を増している[6]。これにより、経済および設計の専門家が介入を構築し、恩恵を受けそうなコミュニティでそれを試験して、多くの場合事前に登録された指標に従ってそれを評価し、効果があるとわかった治療法を広く普及させるという、コミュニティ「を実験台にする」モデルの普及が促進された。
このアプローチは、「コミュニティベースのイノベーション」とは対照的だ。これは個人の健康研究ではなく公共の健康研究で開拓された、学術的な「参加型アクションリサーチ」(PAR)と関連した手法だ。PARもまた、後のデジタル技術(時分割処理、パーソナルコンピューティング、多くのアプリケーションなど)の基礎を築いた、多くの初期のデジタル技術のやり方に近い[7]。「3–3失われた道ダオ」で簡単に説明したように、これらはデジタルツール「で実験する」システム設計者の多くが参加している、アーリーアダプターのコミュニティで始まった。これらのコミュニティは、自分たちのシステムが何に使えそうかについての思いつきは持っているが、何が望ましい結果かについて、事前に決めた基準にまで落とし込むことはめったにない。またシステムのコンポーネントは他のアーリーアダプターが作成することも多かった。これらのシステムは隣接するコミュニティに広がり、そのコミュニティから予期せぬ形で何度も学び、その学びを製品設計にフィードバックし、さらにコミュニティ作成のアプリケーションも公開することで、最終的には一般にも広まる。
出典:Netscribesのデータ[8]
「〜を実験台にする」と「〜で実験する」にはそれぞれ明確な長所と短所がある。しかし後者のやり方は整合性がなく、危険なものにすらなってきた。これは特に、ベンチャーキャピタルが支える今日のデジタル技術業界で求められている採用拡大のスタイルのためなおさら悪化している。LinkedIn創設者リード・ホフマンのようなベンチャー資本家は、「ブリッツスケーリング」を推進する「スケールの達人」をもてはやしてきた。ブリッツスケーリングとは、スタートアップ企業がベンチャー資金の大規模な初期投資を受け、ユーザーベースを急速に拡大する投資を行い、その後、このスーパーモジュラリティの利点(ネットワーク効果、ユーザーデータからの学習など)を活用して、市場で支配的な地位を獲得することだ[9]。おそらく、この最も劇的な例は、ホフマンが支援するOpenAIだ。同社はChatGPTの立ち上げから数カ月以内に1億人のユーザーを獲得した。このような急速な導入により、広範な社会的懸念が生まれ、こうしたシステムや規制によって生じる潜在的な社会的損害や、「早く動いていろいろ壊す」という悪循環の回避や、比較的初期の成長が遅い技術(配車サービスやSNSなど)に伴う社会的反発が引き起こされた[10]。
基本的な課題は、「〜で実験する」は、完全に資本主義的な市場主導型の新技術管理モデルと組み合わせると危険だということだ。事前試験ではなく、システムの損害、課題、相互依存性が出てきた時点でモグラ叩き式に対応しようとするため、開発プロセス自体が販売数や採用数ではなく、それを適用するコミュニティへの技術の影響についての総合的な考え方に基づいて推進されねばならない[11]。これはまさに「3–3失われた道ダオ」で議論した初期の⿻実験の多くが提供を目指していたものだ。そこで挙げた手法は、多くの社会セクターと標準化プロセスを巻き込み、商業的な規模を制限しながら提供しようと試みていた。しかし、このバランスのとれた「〜で実験する」でさえ、最終的には世界規模の変革を目指すものの、重大なリスクを伴う可能性のある技術について、私たちが求める最高度の安全で包括的な開発には、まったく及びもつかない。
特に、技術がそれを利用するコミュニティの利益のためにうまく開発され、これらのコミュニティで発生する可能性のあるすべての系統的な害について配慮したとしても、このアーリーアダプターのコミュニティに属していない人々に対して依然として大きな波及効果がある。主な危険として、技術が武器として使用されたり、コミュニティによって他の人を犠牲にして利益を得るために利用されたりしかねないのだ。これは一見したよりもはるかに一般的な影響だ。なぜなら、「役立つ」および「無害な」ツールでさえ、(多くの場合特権を持つ)アーリーアダプターのコミュニティに社会的および経済的利点を与え、彼らが他の人を従属させたり、疎外したり、植民地化したりするために使えるからだ。Microsoftの社長ブラッド・スミスが頻繁に繰り返すように、ほとんどのツールは武器としても使える[12]。この「競争」効果には、ツールの利点や可能性を競争で利用しようとする(そしてそれにより、その結果として生まれる競争関係を活用し解決しようとする圧力を作り出す)コミュニティによる採用を促し、さらにコミュニティを超えてその技術が普及できるようにするという利点がある。しかしそれは、よくても⿻自由の基盤を潰す排除と不平等を生み出してしまい、最悪の場合、新しいツールの利点を損ない、果てはそれを普遍的な危険に変える「軍拡競争」の動きにつながる恐れさえある。
この傾向を克服する自然な方法は、技術が既存の主要な社会の分断をほぼバランスよく乗り越えて発展し、参加者のネットワークがその内部の害を管理するだけでなく、技術へのアクセスとその方向付けを代表する集団間の潜在的な競合する利益を解決できるようにすることだ。同時に、このような普及を有効に行うには、アーリーアダプターが十分な名声を持っているか、またはそれぞれのネットワークで、ほぼバランスのとれた方法で技術を普及させられるツールの利点を通じて名声を獲得できる必要がある。
これは、⿻を普及させるための⿻戦略がどのようなものであるかについて、野心的ながらかなり明確なイメージを生み出す。
①その技術を最初に導入するシードは、その技術で橋渡しを目指す多様性を包含するのに十分な規模のコミュニティでありつつ、非常に多数のそうした実験のひとつでしかないくらいに小さい規模でなければならない。
②シードは、具体的な価値を獲得している、またはその技術を使うだけでなく、貢献にも関心を持つアーリーアダプターのコミュニティである必要があり、また予想される失敗によって深刻な害を受けるほど脆弱であってはならない。
③シードは、何らかのネットワーク内で名声を得るか、その技術の助けを借りて名声を獲得できる必要がある。そうすれば、さらなる普及の可能性が高まる。
④シードは、総合的な害を管理、対処し、技術の総合的な利点をサポートする制度を備えた強力なコミュニティでなければならない。
⑤シードは、バランスのとれた普及を確保し、衝突を回避し、波及効果に対処するために、シード間で多様性を持ち、緩やかなコミュニケーションネットワークを持つべきだ。
この5つはどれもそれ自体として難しいし、それらを同時に完璧に達成するのは明らかに不可能だが、これらの目標は、⿻で影響を与えるセクターを検討する際の大まかな指針となる。さらに、これらの目標の達成が非現実的ではないことを示すために、本書のマーケティング(つまり、どんな推薦を依頼するか、報道を求めるメディア、開催するイベントなどの選択)でこれらの基準を使った。このアプローチを私たちは⿻マーケティングと呼ぶ。これを完全に説明することは複雑だが、図6–0–Bは最後の基準についてのアプローチを示している。すべてのオーディエンスを対象に、その中の主要区分線を考慮し、これらの区分線全体にわたってマーケティングベクトル(推薦者など)を選択し、そのアプローチを各サブコミュニティにも再帰的に適用したのだ。図6–0–Bは、関連する「ツリー」の2段階下で生成された分類を示す。このアプローチの結果がどこまで効果的だったか、またこれをうまく実装できたかどうかについては、執筆時点での私たちよりも、この本とその推薦の辞を読む皆さんのほうが正確に判断できるはずだ! このプロジェクトの多くの部分と同様に、一緒に実験して学ぼう。
肥沃な土壌
まず規模の問題について考えよう。コミュニティ内で⿻技術の便益を実現するには、そのコミュニティがその技術を使って包含したいと考える多様な集団を少なくとも大まかには含むべきだ。これはその技術の方向性ごとに大きく異なる。最も親密な技術であるポスト表象コミュニケーションと没入型共有現実は、最小のコミュニティや関係性においても強力であり、規模やシーディングの多様化にほとんど制約がないため、これら以外の基準を優先するのが自然だろう。反対に、投票システムや市場は、特にそれを社会的に豊かな形態において、関連性を持たせるにはかなりの規模が必要となるため、親密なコミュニティではほとんど使われず、参入ポイントははるかに少なく、より野心的で危険の可能性も高まる。
出典: 著者たちが生成、アイコンはすべてパブリックドメイン
しかし、ほとんどの⿻技術は、どんな規模でもある程度は柔軟性を持つ。だから実験に最も魅力的な場所は、ほとんどの応用を可能にできるだけの多様性を内部に含み、多様で安全で権威のあるシードを合理的に選択できるほどの多様性がある場所となる。単純な定量的表現では、このような例を具体的に示せるほどの豊かさは得られないが、簡単な経験則は、図6–0–Cに示したように、ユニット数で定量化されたコミュニティ内の多様性とほぼ同じ数の多様性がコミュニティ間でも存在するようにすることだ。(非常に大まかに)100億人の世界では、これらは約10万人のユニットとなる。これは、世界全体をそうしたユニットに分割すると10万のユニットができるという計算による。この規模は、つまり世界人口の平方根なのだ。もちろん、10万という数にとらわれすぎてはいけないが、⿻のシードを植えるのに最も肥沃な土壌となるコミュニティと組織の規模が、これでだいたいわかる。
この規模のコミュニティはいろいろある。地理的には、これは多くの中規模自治体(大都市または小都市)の規模となる。経済的には、大企業の従業員数、政治的には中程度の国の国民数だ。宗教的には、たとえばひとつの教区内のカトリック教徒数だ。教育的には、大規模大学の学生数より少し多いくらいだろう。社会的には、多くの中規模市民団体や社会運動の会員数に近い。文化的には、典型的なテレビ番組、舞台芸術家、またはプロスポーツクラブの活発なファンベースにほぼ相当する。つまり、これは広範囲の社会領域で普及している組織レベルであり、測量のための豊富な領域を提供してくれる。
測量者の地図
これまで本書で扱った⿻実験の最も重要な2つの場所は、台湾とWeb3コミュニティだろう。これら2つの場所はいくつかの重要な特徴を共有するが、一方でその特徴と、重視する⿻応用の両面でも違いがいろいろある。
まず各コミュニティの多様性の種類は根本的に異なる。完全に信頼できる統計はないが、Web3ユーザーは、インターネット全般に似たパターンに従って、世界中にかなり広く分散している。しかしその利用者は技術的に非常に洗練されており、男性に偏り、非常に若く、この分野での私たちの経験に基づくと、無神論者で、政治的には中道右派、民族的にはヨーロッパ、ユダヤ、アジア系の傾向がある[13]。台湾のデジタルエコシステムの参加者は明らかにほとんどが台湾出身者で、したがってそこの民族はほとんど代表されている。しかし年齢、技術的背景、政治的見解、宗教的背景はずっと多様だ[14]。
この2つのエコシステムは、本書の前の部分で取り上げた⿻の別の側面にも焦点を当てている。台湾は主に、⿻のより深く狭義な用途と、それを最も強力にサポートする基本プロトコル(アイデンティティとアクセス)に焦点を当てている。グローバルなWeb3コミュニティは、より浅く包括的な用途と、それを最も強力にサポートする基本プロトコル(関連付け、商取引、契約)に焦点を当てている。
どちらも⿻の重要な初期のテストベッドだったが、私たちの基準に照らすと、その限界も明らかになる。台湾のエコシステムは、そこで開発された多くのアプリケーションに必要な規模よりも大きい。幅広いエコシステムに支えられた高度な実験に取り組むさまざまなサブコミュニティ(彼らはそれを「データ連合」と呼ぶことが多い)が運営されているのは、そのためだろう。台湾のエコシステムは、アジアや一般的に民主主義国と呼ばれる多くの国々において高い評価を得る可能性を持つが、その周辺で起きている地政学的な対立のため、十分に正当な世界的普及へのシードとなれずにいる。一方、Web3コミュニティは、新しい市場制度が資本主義の影響力に匹敵できるかを十分に検証するには、いささか小さくて均質すぎるだろう。さらに、Web3空間を悩ませてきた多くのスキャンダルを見ると、それが公平に広がるイノベーションの指針として、一般性を持てるのかどうか怪しい。
だが重要な点として、規模はどちらもほぼ同じだ。2021年、Web3アプリケーション(dApps)の月間アクティブユーザー数は約150万人だったが、そのうちGitCoinなど最も⿻に近いサービスに積極的に参加しているのは、ごく一部だ。台湾のg0vコミュニティによって構築された各種の⿻サービスも、同様の人数に達している[15]。
したがって、次に⿻を広げる最も有望な場所がどこかは、慎重に検討すべきだ。すぐに思いつくのは都市行政で、これは本書の議論でもすでに数多く登場している。しかし、これまでそうした公共部門ばかり扱ってきたからこそ、本書のこの部分では、公共部門の「民主主義」の狭い定義よりもはるかに幅広く生活に影響を与える、現実に⿻を導入できそうな各種の社会部門に焦点を当てる。右記のスケールに一致し、幅広い生活体験をカバーしながら、幅広い社会で重視されている確立された分野に取り組んでみようというわけだ。
特に、図6–0–Cにも象徴されている、次の領域を考慮する。
①職場。資本主義経済の大部分が職場主導なので、非常に影響力のある部門だ。先述のとおり、特に大企業では、一致する規模のものを見つけるのは非常に簡単だ。
②保健。これまた、ほぼすべての人の生活に影響を与える部門で、しかも前節で扱った労働年齢以外の人々に特に関連しており、おそらく最も広く重視されている社会部門だ。前述のように、多くの医療システムは規模が合致している。
③メディアは、ほとんどの社会の概念的、コミュニケーション的、観念的な基盤に近いため、新しい実践を広める能力が最も高いはずだ。多くの出版物やSNSプラットフォームが、この規模に相当する。
④環境は、私たち全員を取り囲み、他に類のない地球規模で影響を与え、他の分野を補完し、人間の仕事、健康、アイデアの交換を超えて考えようとする多くの人々にとって魅力を持つ。
⑤学習は、ほぼ普遍的に経験されるものだ。この本を読んでいるほとんどの人は何年も学習に費やしてきて、その経験に深い敬意を抱いているはずだ。そのため、学習は幅広い人々にとって強力なシードとなる。前述の通り、多くの教育システムや環境は、⿻の繁栄にとって理想的な規模と多様性の範囲にほぼ収まっている。
この各領域で、各種の技術がどのようにその分野全体の実践を変え、それが分野を超えて拡大するかを、一連の小話で検討し、それを大まかに定量化してみよう。
Steven Levitsky, and Lucan Way, Revolution and Dictatorship, (Princeton: Princeton University Press, 2022). ↩︎
Hannah Arendt, On Revolution, (New York: Penguin, 1963). ↩︎
David Graeber, and David Wengrow, op. cit. ↩︎
R. A. Fisher, The Genetical Theory of Natural Seleciton (Oxford, UK: Clarendon Press, 1930). James Milroy and Lesley Milroy, “Linguistic Change, Social Network and Speaker Innovation”, Journal of Linguistics 21, no. 2: 339-384. Gretchen McCulloch, Because Internet: Understanding the New Rules of Language (New York: Riverhead, 2019). Daron Acemoglu, Asuman Ozdaglar and Sarath Pattathil, “Learning, Diversity and Adaptation in Changing Environments: The Role of Weak Links” (2023) at https://www.nber.org/papers/w31214. ↩︎
Donald B. Rubin, “Estimating Causal Effects of Treatments in Randomized and Nonrandomized Studies,” Journal of Educational Psychology 66, no. 5: 688-701. ↩︎
Abhijit V. Banerjee and Esther Duflo, Poor Economics: A Radical Rethinking of the Way to Fight Poverty (New York: PublicAffairs, 2011). 〔『貧乏人の経済学 もういちど貧困問題を根っこから考える』A・V・バナジー, E・デュフロ著, 山形浩生訳, みすず書房, 2012〕 ↩︎
Fran Baum, Colin MacDougall and Danielle Smith, “Participatory Action Research”, Journal of Epidemiology and Community Health 60, no. 10: 854-857. ↩︎
https://www.netscribes.com/chatgpt-4-a-near-to-perfect-ai-powered-digital-assistant/ ↩︎
Reid Hoffman and Chris Yeh, Blitzscaling: The Lightening-Fast Path to Building Massively Valuable Companies (New York: Currency, 2018). For a thoughtful and balanced evaluation see Donald F. Kuratko, Harrison L. Holt and Emily Neubert, “Blitzscaling: The Good, the Bad and the Ugly”, Business Horizons 63, no. 1 (2020): 109-119. ↩︎
Future of Life Institute, “Pause Giant AI Experiments: An Open Letter” March 22, 2023 at https://futureoflife.org/open-letter/pause-giant-ai-experiments/. ↩︎
Daron Acemoglu and Todd Lensman, Regulating Tranformative Technologies (2023) at https://www.nber.org/papers/w31461. ↩︎
Brad Smith and Carol Ann Browne, Tools and Weapons: The Promise and the Peril of the Digital Age (New York: Penguin, 2019). ↩︎
a16zcrypto. “State of Crypto 2023.” Https://A16z.Com. Andressen Horowitz, 2023. https://api.a16zcrypto.com/wp-content/uploads/2023/04/State-of-Crypto.pdf. ↩︎
Austin, Sarah. “Web3 Is About More Than Tech, Thanks to Its Inclusivity.” Entrepreneur, June 3, 2022. https://www.entrepreneur.com/science-technology/web3-is-about-more-than-tech-thanks-to-its-inclusivity/425679. ↩︎
Friedrich Naumann Foundation. “Examples of Civic Tech Communities-Governments Collaboration Around The World,” n.d. https://www.freiheit.org/publikation/examples-civic-tech-communities-governments-collaboration-around-world. ↩︎