自由 · 4-0
権利、オペレーティングシステム、⿻的自由
インターネットの創始者J・C・R・リックライダーは、これまでのインターネットプロトコルよりもはるかに広範な基本プロトコルこそがネットワーク社会の基礎となると考えた。しかし、彼の分析は哲学的分析というよりは、長々としたリストだった。社会の基盤に関する明確なビジョンを表明するために、この章では、⿻を定義づける概念を利用して、これらのプロトコルが何で構成されるべきか、社会的にどのような役割を果たすべきかを概説しよう。次に、現在の実装の限界、およびそれらをもっと完全な形で実現する方法を体系的に検討する。
⿻社会の基盤となるインフラは、形式と構造の両方で⿻の原則に沿ったものとなるべきだ。厳密に言えば、権利システムという政治的アイデアと、それに密接に関連したOSの技術的概念を、シームレスに組み合わせる必要がある。本質的には、社会を⿻的な理解に基づいてデジタルで表象しなければならない。つまり社会というものを、多様で交差する社会集団や、野心的で包括的なコラボレーションの共同実践者の集まりとして理解しなければならない。
民主主義の基盤としての権利
権利は、民主的な生活の基盤となる普遍的な特徴である。最も簡単に想像すると、民主主義(語源は「人民の統治」)は、政府が国民に対して行う一連の行動ではなく、国民による集団的な意思決定の政治システムである。しかし実際には、民主主義の最も基本的な特徴は、基本的な自由と権利だ。これらの「権利」は、時間的にも空間的にも、それぞれの民主主義国ごとに異なるが、幅広い共通性を持ち、それが国連の世界人権宣言(UDHR)などの文書の基礎を形成している。たとえば平等、生命、自由、個人の安全、言論、思想、良心、財産、結社などがある。しかし、厳密な構成や普遍性はどうあれ、最も重要なのは、なぜそれらが政治システムとしての民主主義の健全性にとってそれほど不可欠なのか、そしてなぜこれほど多くの人々や組織が、これらの権利を保護しないと民主主義が存在し得ないと信じているのか、という点だ。
著名な政治哲学者ダニエル・アレンは、最近の著書『民主主義による正義』(未邦訳)で、この関係を明確に説明している。「人々の意志」が安全かつ自由に表現されなければ、政府はそれに応えようがないのだ[1]。良心に従って投票するとその人に危険が及ぶならば、投票結果は強制者の意志しか反映できない。市民が社会的および政治的団体を強制なしに形成できなければ、権力者の決定に団結して異議を唱えられない。彼らが多様な経済的交流を通じて生計を立てられなければ(たとえば、国家や主人の奴隷にされたりしていれば)、彼らの表明する政治的見解は当人の内なる声ではなく主人の代弁と考えるべきだ。権利がなければ、選挙は有名無実となる。
自由が民主主義を弱体化させるのでは、という見方があるが、理論的にも現実的にも的外れだ。多くの著名な民主主義国は、その基盤となった権利を弱体化させたために「自殺」してしまった。おそらく最も有名な例はワイマール共和国だろう。この共和国は両大戦間の30年間にわたりドイツを統治したが、国会で国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)が多数議席を獲得したときに終わった。ナチ党が与党となってアドルフ・ヒトラーが首相に任命され、史上有数の悪名高い独裁国家が生まれてしまったのだ[2]。しかし、今日の多くの民主主義社会がそこまでいくかどうかはさておき、多くの国が選出してきた指導者や政府は、政治学者のスティーブン・レヴィツキーが「競争的権威主義」体制と名付けたものへと民主主義を転換させてきた[3]。
民主主義が機能するために、なぜ人権が前提となるのだろうか? 市民は自分が参加する民主的コミュニティの集合的な生活を作り上げる能力を持つし、それを作り上げたいと思っているからだ。だから共通の利益を求めて結社集会を行い、それを政治的に伝えたいと願うのだ。もちろんこれは絶対的なものではなく、議論も分かれる部分はある。たとえば、スカンジナビア諸国は、いわゆる「積極的言論の自由」、つまり、手段に関係なくすべての市民が自分の意見を表明できる現実的な方法を持っていることの重要性を強調してきたが、米国などの他の国は、「消極的言論の自由」、つまり意見の表明を政府の介入で妨害できないことを強調する。一部の社会(たとえばヨーロッパ)は、市民社会が国家から独立して存在し、したがって政治が可能になるために必要な基本的権利としてプライバシーの重要性を強調する傾向がある。他の社会(たとえばアジア)は、集会と結社の権利を民主主義の機能の中心として強調しがちだ。だがこれらの相当部分は重なり合っているし、それが機能する民主主義社会の基本的な前提として、世界中の民主主義国はこれらを共同で維持するべきだと捉えている。
国家(および地方)政府、特に司法制度は、権利を尊重し、その境界を明確に定める上で、しばしば重要な役割を担う。しかし、権利を国家の法制度のみで考えるべきではない。権利は、さまざまな文化的背景(民族、地方、国境を越えたなど)に根ざした、深い信念や価値観を表す。権利は、人間の行動の可能性を切り開くだけでなく、そこに正当性も与える。たとえば、民間の職場やインターネットプラットフォームは、言論を制限することはできる。しかし、言論の自由があるために、従業員や顧客が受け入れる言論統制も厳しく制限される。同様に、世界人権宣言のような文書は世界的に強制することはできないが、南アフリカの最高裁判所の判決を含め、多くの国の法律に影響を与えている[4]。大小さまざまな機関(裁判所、企業、市民社会グループなど)は、これらの共通の文化的期待を守る上で重要であり、その中で単一の機関だけが権利の「執行者」または「源泉」にはならない。この意味では、国家が権利の重要な擁護者のひとつではあるが、人権は国家をまたがり、国家を超えて存在すると言える。
また権利は、固定された達成可能な現実というよりは指向や目標でもある。米国の歴史の多くは、建国当初の平等指向の中で認められていなかったものが、実現に向かうドラマなのだ[5]。多くの社会的、経済的権利(質の高い教育、適切な住宅など)は、特に開発途上国ではまだまだ政府の力が及ばず、すぐには実現できないが、それでも人々の最も深い願望を示すものとなっている[6]。
アプリケーションの基盤としてのオペレーティングシステム
オペレーティングシステム(OS)はデジタル生活のあらゆるところに存在する。Linuxは、史上最も野心的で成功したオープンソースプロジェクトだ。Windowsは、Microsoftが作ったもので、世界で最も有名なOSだ。ほとんどのスマートフォンはiOSかAndroidで動いている。
OSは、その上で実行されるアプリケーションにできることを大きく定義する。OSにはパフォーマンス、外観、速度、メモリ使用など、いくつかの基本的な特性があり、そこで実行されるアプリケーションはそうした特性を共有する。そしてそのOSプラットフォームで動作するためにはその特性を尊重する必要がある。たとえば、iOSとAndroidではタッチインターフェースが可能だが、それ以前のスマートフォン(BlackBerryやPalmなど)はスタイラスまたはキーボード入力しかなかった。今日でも、iOSアプリとAndroidアプリは外観、操作性、パフォーマンス特性が違う。アプリケーションは特定の(または複数の)プラットフォーム向けにコーディングされ、OSに組み込まれているプロセスを利用して、できることとできないこと、カスタムで構築すべき動作、および基盤プロセスに任せられるものを決める。
OSとアプリケーションの境界線は必ずしもはっきりしない。Macintoshはグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)OSを搭載した初の量産コンピュータだったが、それ以前のコマンドラインインターフェースを搭載したコンピュータでも、GUIなどの要素を含むプログラムはあった。同様に、仮想現実(VR)および拡張現実(AR)ヘッドセット(「5–2没入型共有現実(ISR)」を参照)は現在でははるかに実用的になったが、スマートフォンを適切に頭に装着して実行するVRおよびAR体験もある。さらにOS設計者は、基盤OSの整合性を侵害したり脅かしたりするようなアプリケーションの動作から保護するセキュリティプロトコルを組み込むが、それを完全に防ぐのは不可能だ[7]。ほとんどのコンピュータ「ウイルス」は、まさにそのような違反の例だ。OSは、このようにして、システム上のアプリケーションの通常動作を定義し、アプリケーションが利用できるツールと、他のアプリケーションに対する合理的な期待を提供し、簡単に実現できる範囲を定める。
出典: Wikipedia, public domain, Author: Gerhard ≫GeWalt≪ Walter[8]
OSは、アプリケーションの予想外の動作に常に適応しなければならない。これは、望ましい動作(新しいアプリケーションを有効にする)と望ましくない動作(ウイルス対策)の両方を含む。これらの適応は、軽微で表面的な場合もある。たとえば、セキュリティ保護を目的としたスマートフォンOSのアップデートは多い。また、「顔文字」や「絵文字」は、ユーザーが文字の組み合わせで入力する方法から、OSの入力機能にネイティブに統合する方法に次第に移行してきた[9]。もっと劇的な変更もある。たとえば、Googleは、自動車やテレビと互換性のあるAndroidバージョンを導入した。
OSはさまざまな方法で自分の整合性を守る。セキュリティパッチは最も素早く直接的なものだが、開発者教育、開発者サポートの幅広いエコシステムの構築、顧客の使用状況と期待の段階的な発展も整合性を保つ手段だ。OS上に構築されたアプリケーションは、OSの内部開発をサポートするだけでなく、OSの更新や、元のOSを強化しそれと競合さえする新OS開発も促進する。またOSごとにも違いがあり、競合しつつも多くの共通するアフォーダンスを持つ。OSは、少なくとも部分的にはクロス開発と下位互換性および上位互換性の両方を可能にする。これにより、以前のバージョン用に設計されたアプリケーションが引き続き機能し、アプリケーションは新しい世代に対して「耐将来性」を持てる。またユーザーが幅広いアプリケーションにアクセスできるようになる。
ほとんどのOSは、絶えず更新されている。完全にはサポートできなかった機能をサポートし、促進しようとするのだ。こうした試みの繰り返しから、OSは再帰的に学習して、サポートを改善する。たとえば、最初にリリースされた有名な音声「スマートアシスタント」(AppleのSiriやAmazonのAlexaなど)は、笑えるほど低品質なものばかりだったが、システム自体を通じたユーザーの参加により品質は次第に向上し、これらのOSで高度な音声機能が実現されるようになった。
⿻基盤
権利の仕組みとOSには多くの共通点がある。その上で実行される民主社会やアプリケーションの基盤として機能し、そのプロセスで想定されている背景条件を整え、システムの完全性を確保するために特別な防御と保護を必要とする。そして少なくとも一部は何を目指したいかという指針にとどまっており、まだ実現できていない不完全な部分もあり、時にはそれが内部で緊張関係に陥る。また、強力な執行メカニズムに支えられている一方で、明確に定義された制度とコードであるだけでなく、漠然とした文化の一部でもある[10]。ただし、これらの一般的な類似点を超えて、権利とOSの両方には⿻の観点において重要で決定的な2つの側面がある。それを抽出して、リバタリアンおよびテクノクラートのアプローチと対比しよう。
■ダイナミズム
OSは当然ながらダイナミックだが、考えてみれば権利の仕組みも同じだ。このダイナミズムは⿻の中核である。権利はそれに基づく民主主義を支え、OSはその上で実行されるアプリケーションを支える。権利の枠組みを作った人やOSの設計者は、そうした基盤がどのように使用され、悪用され、新しい見方をされるか予測しきれない(または、「ぼんやりとしたガラスを通して」しかそれを見通せない)。なぜなら異なる立場や、時には敵対的なアクターが(多くの場合は技術的な手段を通じて)実験やイノベーションを可能にするために、彼らが提供した空間を利用するからだ。
たとえば中国の金盾きん じゅんは、インターネットコンテンツを制限および検閲し、専制主義をコード化している。しかし、今日の民主主義国家に特有のグローバルSNSプラットフォームは、敵対者による選挙干渉や誤報のためのマイクロターゲティングを含め、顧客の関心を売り渡すこともある[11]。したがって社会のあり方をめぐる民主的な会話を効果的に進めるには、そうした対話とそこでの権利表明を支える基本的な能力を開発し続ける必要がある。
ITは言論の自由についての見方を変えてしまった。かつて言論の自由は、国民が自由に政治的立場を形成し、支持を得ることを保証する、権利の主要な表現と考えられていた。しかしその見方は、ITのおかげで危うくなった。この見方は、情報が乏しい環境を前提にしていた。その環境では、発言を聞かせないようにするには、情報を抑圧するのが効果的だった。
現在の環境はまったく違う。情報は豊富だが、関心は限られている。そういう環境では反対派や望ましくないコンテンツを抑圧するよりも、単に気を散らすものやスパムであふれさせるほうが簡単な場合が多いのだ(これはゲイリー・キング、ジェニファー・パン、モリー・ロバーツの研究で劇的に記録されている[12])。
こうした状況では、検閲を防ぐよりも、多様で関連性のある本物のコンテンツに注目してもらうことが重要となる。言論の自由に関する保護もそれに応じて進化するべきなので、以下でこれを確実に実現するための道筋について説明しよう。
しかし、ダイナミズムはそれ自体が望ましいものではなく、手段にすぎない。複数の視点から全体的な構造を抽出し、総合的な究極の目標を追求するためのものではない。むしろダイナミズムは、システム上で動くアプリケーションや民主制度を明確に支援し、絶え間ないアップデートや改善能力の範囲内で、そうしたものがイノベーションを行い、未来を探求して発見できるよう支え、それが将来的にも発展し続けられるようにすることなのだ。OSと権利は、その上で実行されるアプリケーションと民主主義のニーズが変わるにつれて発展し続け、そのアプリケーションのエコシステムを支えねばならないが、企業利潤や国の利益といった、もっと大きな外部の目的のために自滅するなら、すべてが破綻してしまう。
■権利と関係性
権利の⿻理解でもうひとつ中核となるのは、権利体系の一部は個人についてのものではあるが、権利すべてが個人についてのものではないということだ。OSは、個別のアプリケーションとユーザーを保護するし、権利システムも当然ながら、それを使って自分が最も重視する価値観や利益を守ろうとする個人に対し重要な保護を提供する。だが権利は個人だけでなく、仕組みや集団にも影響する。
結社と宗教の自由は、結社や宗教自体と、それらを構成する人々を保護する。米国憲法のような連邦制は、個人だけでなく州や地域の権利も認める。OSはシステム全体の機能以外にも、アプリケーションとユーザー同士のやりとりも保護する。コミュニケーションは、OSの中だろうと「公共空間」の中だろうと、常に複数の参加者が関与する。そして「公共空間」やソーシャルネットワークの存在は、そうした参加と集合行動の安全性とに左右される。商業の自由でさえ、個人の選択と二者間取引の問題と思われがちだが、通常は法人の権利とその契約上の取り決め、および団体交渉の権利も積極的に保護する。
さらに、これらの自由を保護し擁護する主体は、国家とその関連機関よりずっと広範だ。代表例としては商法がある。アン=マリー・スローターやカタリーナ・ピストールなどの学者が強調しているように、法的ルール、貿易協定、前例の相互尊重の国際ネットワークこそが、知的財産、独占禁止法、金融機関の資本要件などの重要なトピックの中心となる考え方を作り上げている[13]。これらはそれぞれ、専門家、国際機関、さらにはロビー団体の違ったネットワークに管理されている。したがって権利は、相互作用するネットワークを形成する多様なグループが保持するだけでなく、文化、機関、エージェントの同様の交差するネットワークが定義するものでもある。権利は、人々や社会集団が交差し、その社会的交流のネットワークを守り保護する、絡み合う社会集団の集まりなのだ。
■リバタリアニズムとテクノクラシーとの対比
⿻的権利とOSの動的でネットワーク化された適応型の基盤は、それぞれ民主的な探求とアプリケーション環境の進化をサポートする。そしてこれは、リバタリアニズムとテクノクラシーのイデオロギーに体現されている政治的および技術的な一元論的視点とはまったく対照的なものだ。リバタリアニズムは、明確に定義された歴史的権利の厳格で「不変」なセットに基づいており、主に個人の私有財産と、これらの財産関係に挑戦する「暴力」の防止を重視する。この見解では、権利は他の権利と、権利が生まれた社会的または文化的コンテキストの両方から抽象化または切り離されており、権利はアトムレベルの個人にのみ属し、技術システムはこれらの権利を徹底的かつ完全に変更や社会的侵入から隔離するべきだとされる。一方、テクノクラシーは、「客観性」「効用」「社会的厚生」という機能的な概念と合致する技術システムの設計を基盤としている。リバタリアンは権利を絶対的、明確、静的、普遍的なものと見なす。テクノクラートは権利を、定義可能な社会の利益を追求する上での単なる障害、または負担と見なす。
⿻自由
デジタルのシミュレーション世界(「メタバース」とも呼ばれる)に浸る未来に懐疑的な人でも、今日では多くの人が生活の大部分をオンラインで過ごしていることは否定できないはずだ。生活の中で成長を続けるオンライン領域では、人々の行動、発言、取引はITが提供する可能性に制約される。それが人々をネットワークで結びつけ、社会構造を織りなすのだ。この意味で、そのネットワーク内で人々を接続するプロトコルは、デジタル時代における権利を定義し、社会を動かすOSとなる。
私たちが「3–2つながった社会」で説明した⿻の伝統は、知的かつ哲学的に、自由民主主義の基盤となる財産、アイデンティティ、民主主義の単純なフレームワークを超えて、社会生活の豊かさに見合った高度な代替手段に移行する必要性を重視するものだった。技術的に見るなら、コンピュータ間の通信のガバナンスフレームワークを提供した初期のネットワークプロトコルは、まさにそうした高度な代替手段を達成しようとしていた。それは権利とOSという類似ながら違ったアイデアを融合させるもので、人間間ネットワーク用のOS構築を、⿻的権利の概念をサポートするために必要な基本能力の提供だと見ていたのだ。
技術システムは定式化された数学的関係でインスタンス化されるため、社会の記述に直接対応する標準的な数学モデル、つまり図4–0–Bに示す「ハイパーグラフ」を使用すると必要なものが理解しやすい。ハイパーグラフは、ネットワークまたはグラフの一般的な概念を拡張し、双方向の関係だけでなく集団も容認する、「ノード」(つまり、ドットで表される人々)と「エッジ」(つまり、色を塗ったグループ)の集合となる。各エッジ/グループの色は、関係する関係の強さ(つまり、数学的には「重み」と「方向」)を表し、エッジに含まれるデジタル資産(データ、計算、デジタルストレージなど)は、これらのグループの共同基盤を表す。このようなデジタルモデルは、もちろん文字どおりの社会世界ではなく、その抽象化であり、実際の人間がそれにアクセスするには、図に入るための、矢印で表したさまざまなデジタルツールが必要となる。これらの要素は共同で権利/OSプロパティのメニューを構成する。次の5つのセクションでは、それぞれを個別に詳述しよう。その5つとはIDと人物性、団体と⿻公衆、商取引と信頼、財産と契約、アクセスだ。
これらを反映した共有デジタルプロトコル構築のプロジェクトは、「3–3失われた道ダオ」で示したようにまだ初期段階にとどまる[14]。富裕な国でさえ、前述の自然なネットワーク機能をオンライン体験の基本として、多くの人に提供できていないのだ。オンラインでの生命と人格の権利を保護する、非独占的な識別プロトコル[15]は普及していない。自由な結社を可能にする、オンライン通信方[16]法[17]と[18]グループ形成のための非独占的なプロトコルも普及していない。現実世界の資産の商取引をサポートする非独占的な取引プロトコルもない。デジタル世界での所有権と契約の権利を可能にする、計算、メモリ[19]、データ[20]などのデジタル資産を安全に共有するためのプロトコルもない。そして、これらの課題に対処するほとんどのアプローチは、あまりに制約されたネットワークの基本概念に基づいており、交差するコミュニティが持つ中心的な役割を無視している。権利がデジタル世界で意味を持つためには、これを変えねばならない。
幸いなことに状況は変わりつつある。過去10年間のさまざまな開発が、インターネットの「失われたレイヤー」の役割を断続的に引き受けてきた。たとえばWeb3および「分散型ウェブ」エコシステム、ヨーロッパのGaia-Xデータ共有フレームワーク、さまざまなデジタルネイティブ通貨と支払いシステムの開発、そして最も顕著なものとして、過去10年間にインドで開発された「India Stack」に代表される「デジタル公共インフラ」への投資の増加などだ。これらの取り組みは資金不足で、国やイデオロギーで分断されており、小規模すぎたり、テクノクラートやリバタリアンのイデオロギー、あるいはネットワークに対する過度に単純化された理解で歪んでいたりする。しかしどれも、⿻の体系的な追求が実現可能だと示してくれるのだ。ここでは、これらのプロジェクトを基盤として、その将来に投資し、⿻的未来への道を加速させる方法を示そう。
Danielle Allen, Justice by Means of Democracy (Chicago: University of Chicago Press, 2023). ↩︎
Richard Evans, The Coming of the Third Reich (New York: Penguin, 2005). ↩︎
Steven Levitsky, Competitive Authoritarianism: Hybrid Regimes after the Cold War (Cambridge, UK: Cambridge University Press, 2012). ↩︎
Hurst Hannum, “The Status of the Universal Declaration of Human Rights in National and International Law” Georgia Journal of International and Comparative Law 25, no. 287 (1995-1996): 287-397. ↩︎
Jill Lepore, These Truths: A History of the United States (New York: Norton, 2018). ↩︎
Jamal Greene, How Rights Went Wrong: How our Obsession with Rights is Tearing America Apart (Boston: Mariner, 2021). ↩︎
Nicole Perlroth, This is How They Tell Me the World Ends: the Cyberweapons Arms Race (New York: Bloomsbury, 2021). ↩︎
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Apple-LISA-Macintosh-XL.jpg ↩︎
Gretchen McCulloch, Because Internet: Understanding the New Rules of Language (New York: Riverhead Books, 2019). ↩︎
Lawrence Lessig, Code: And Other Laws of Cyberspace (New York: Basic Books, 1999). 〔『CODE インターネットの合法・違法・プライバシー』ローレンス・レッシグ著, 山形浩生, 柏木亮二 訳, 翔泳社, 2001〕 ↩︎
Renee DiResta, Kris Shaffer, Becky Ruppel, David Sullivan, Robert Matney, Ryan Fox, Jonathan Albright and Ben Johnson, “The Tactics & Tropes of the Internet Research Agency” (2019), presented to the Congress of the United States, available at https://digitalcommons.unl.edu/senatedocs/2/. ↩︎
Gary King, Jennifer Pan and Margaret E. Roberts, “How the Chinese Government Fabricates Social Media Posts for Strategic Distraction, Not Engaged Argument”, American Political Science Review 111, no. 3 (2017): 484-501. https://www.cambridge.org/core/journals/american-political-science-review/article/how-the-chinese-government-fabricates-social-media-posts-for-strategic-distraction-not-engaged-argument/4662DB26E2685BAF1485F14369BD137C ↩︎
Anne-Marie Slaughter, A New World Order (Princeton, NJ: Princeton University Press, 2004). Katharina Pistor, The Code of Capital: How the Law Creates Wealth and Inequality (Princeton, NJ: Princeton University Press, 2019). ↩︎
Jenny Toomey and Michelle Shevin, “Reconceiving the Missing Layers of the Internet for a More Just Future”, Ford Foundation available at https://www.fordfoundation.org/work/learning/learning-reflections/reconceiving-the-missing-layers-of-the-internet-for-a-more-just-future/. Frank H. McCourt, Jr. with Michael J. Casey, Our Biggest Fight: Reclaiming Liberty, Humanity, and Dignity in the Digital Age (New York: Crown, 2024). McCourtはこの理論に基づき, Project Libertyという技術改革の最大級の慈善活動を立ち上げた. ↩︎
クローズドな独占名前空間や世界的に管理されたレジストリ( “Decentralized Identifiers(DIDs)V1.0.” W3C, July 19, 2022, https://www.w3.org/TR/did-core/参照)やさまざまな発行源からの各種の資格証をサポートする確認可能な資格証(“Verifiable Credentials Data Model 1.0.” W3C, March 3, 2022. https://www.w3.org/TR/vc-data-model/参照.) ↩︎
“More Instant Messaging Interoperability (Mimi),” Datatracker, n.d. https://datatracker.ietf.org/group/mimi/about/. ↩︎
“Messaging Layer Security,” Wikipedia, January 31, 2024, https://en.wikipedia.org/wiki/Messaging\_Layer\_Security. ↩︎
“DIDComm v2 Reaches Approved Spec Status!” Decentralized Identity Foundation, July 26, 2022, https://blog.identity.foundation/didcomm-v2/. ↩︎
Filecoin Foundation (https://fil.org/) とIPFS (https://www.ipfs.tech/)参照. ↩︎
Holochain (https://www.holochain.org/) 参照. ↩︎