民主主義 · 5-3
クリエイティブなコラボレーション
西暦79年、ヴェスヴィオ山の大噴火により、ローマ都市ポンペイとヘルクラネウムが埋もれた。そこには紀元前1世紀と2世紀のパピルスの巻物1800巻もあった。これらの巻物は、本来なら時間の経過とともに劣化してしまったはずだ。古代世界の重要な哲学的および文学的遺物を含むこれらの巻物は、長い間学者たちの悩みの種だった。これらの巻物を解こうとする初期の試みは18世紀から続くが、もろく炭化した文書の破壊に終わる場合がほとんどだった。しかし、現代の画像技術により、歴史、ハイテク、共同の問題解決の交差点となる画期的な賞、「ヴェスヴィオチャレンジ2023」に代表される、新しい探究の道が開かれた。このチャレンジでは、参加者はスキャンされた巻物にコンピュータでアクセスし、それらを仮想的にほどくことで、各種の賞を獲得できるのだ。
情報の囲い込みを防ぐため、主催者は、参加者にコードの公開やオープンソースによる調査を義務付け、コミュニティ全体の共有知識ベースを充実させるために、2カ月ごとに授与される小規模な「進捗賞」を導入した。注目すべき貢献としては、ブレント・シールズ研究室のセス・パーカーらによる「ボリューム地図製作ソフト(Volume Cartographer)」や、ケイシー・ハンドマーによる独特の「はじける」パターンを形成する文字の特定などがある[1]。後にユセフ・ネーダーはこれらの発見にドメイン適応技術を活用した[2]。競争が進むにつれて、この仕組みのおかげで勝者は発見と方法論を共有するだけでなく、賞金を機器の強化と技術の改良に再投資できるという力学が育まれた。この環境は、グランプリ受賞者の例からもわかるように、新たなコラボレーションの形成にも適していた。
2024年2月5日に発表されたグランプリ賞金70万ドルの基準は、140文字ずつの文章4つの解読と、文字の85%以上の復元だった。学際的かつグローバルなコラボレーションの成果として、ルーク・ファリター(21歳の大学生でSpaceXのインターン)、ネーダー(ベルリンの博士課程の学生)、ジュリアン・シリガー(最近ETHチューリッヒでロボット工学の修士課程を修了)からなるチームが画期的な勝利を収めた。彼らの成果を合わせると、追加で2000文字を超える11列のテキストを復元するという、期待を上回る成果をあげたのだ。各チームメンバーは、それぞれ独自の専門知識と以前の業績をこの共同作業に持ち込んだ。彼らの成功は、学術的に重要なマイルストーンとなっただけでなく、デジタル考古学の分野全体をも前進させた。
音楽、視覚芸術、演劇、建築、映画、さらには料理などのメディアを通じた芸術的表現は、社会集団を定義する共有文化を形成するための、最も強力で標準的な基盤のひとつだ。それは、完全な多感覚共有体験ほど強力ではないが、はるかに広範囲に広がり、口頭でのコミュニケーションよりも豊かにひとつの、時には複数の感覚体験を完全に活用できる。今日、創造的なコラボレーションを可能にするデジタルツールとプラットフォームの組み合わせにより、地理、専門知識、さらにはオーディエンスの境界さえも消滅しつつある。ここではこうした技術による、前例のないアクセシビリティ、リアルタイムのインタラクション、共有された創造空間を特徴とする、共同創造の新しい時代の促進を検討しよう。アーティスト、教育者、起業家は、どのようにしてクラウドソーシングとオンラインプラットフォームの力を活用し、障壁を打ち破って創造プロセスを拡大しているのだろうか? こうした技術は個人を結びつけるだけでなく、これまで以上に包括的でダイナミックで拡張性の高い共有創造プロセスを促進するのだ。
今日の共創
芸術的な共作は目新しいものではない。何千年もの間、ミュージシャン、ダンサー、俳優はバンドを結成してきた。聖書、バガヴァッド・ギータ、ホメロスの叙事詩など、最も有名な文学作品のいくつかは、間違いなく何世代にもわたる多くの人々によって書かれている。映画のエンドロールがときに長すぎるのも、ここに理由がある。
しかし、文化を定義するこれらの共同プロジェクトは、伝統的に時間も費用もかかり、成果物へのアクセスと創作プロセスへの参加の両方が制限されていた。たとえば、共同執筆の場合、一貫性があり理解しやすい物語を実現するために、何カ月、何年も、あるいは何世代にもわたる再話、脚色、書き直しなどが必要なのが通例だ。大規模なライブエンターテインメント業界を見れば、多様な観客に創造的な共同作業の体験を提供するためのチームを世界中に送る費用の高額ぶりがわかる。冒頭で強調したような科学的共同作業など、他の形の共作は、伝統的にロスアラモス研究所のような、物理的に同じ場所にある巨大な研究所で行われてきた。
しかし、「3–3失われた道ダオ」で取り上げたテッド・ネルソンのような人々が構想し、インターネットの構造の一部となった初期の⿻技術は、すでに共同のクリエイティブな実践と共有の可能性を一変させた。
・オンラインコラボレーション:Slack、Asana、Notion(このプロジェクトで使用)などのツールは、地理的な場所に関係なくチームがリアルタイムでコラボレーションできるようにして、ワークスペースに革命をもたらした。これらのプラットフォームは、コミュニケーション、プロジェクト管理、ドキュメント共有のインフラストラクチャを提供することで、ソフトウェア開発からマーケティングキャンペーンまで、幅広いクリエイティブプロジェクトを支える。これらは、デジタルワークスペースが生産性を高め、チームメンバー間のコミュニティ意識を育むことができる例となる。
・クラウドベースのクリエイティブソフト:Adobe Creative Cloud、Autodesk、GitHub(この本の執筆に使用された主なプラットフォーム)は、デザイナー、エンジニア、開発者が共有プロジェクトで同時に作業する高度なツールを提供する。この技術により、リアルタイムのフィードバックと反復が可能になり、構想から作成までの時間が短縮され、流動的でダイナミックなクリエイティブプロセスが実現する。さらに顕著なのは、Googleドキュメントなどの共同ワードプロセッサにより、さまざまな地域の多くの人々によるリアルタイムの共同編集が可能になったことだ。
・オープンソースプロジェクト:最も野心的なクリエイティブコラボレーションの一部は、Wikipediaなどのオープンソースの共同編集プロジェクト上のものだ。そこでは何千人もの人々がコンテンツを共同で作成し、その進め方もきちんとしたものになってきた。GitHubやGitLabなどのプラットフォームは、ソフトウェアの同様の共同開発を促進するが、Hugging Faceなどの他のプラットフォームでは、GFM(生成基盤モデル)開発にこれを活用できる。この共同モデルは、グローバルコミュニティの集合知を活用し、多様な入力と視点を通じてイノベーションを加速し、ソフトウェアの品質を向上させる。
・リモート芸術コラボレーション:アーティストやクリエイターは、Twitch、Patreon、Discord(このプロジェクトについて議論するために使用した主なコラボレーションプラットフォーム)などのプラットフォームを使用して、プロジェクトのコラボレーション、創作プロセス共有、リアルタイムの視聴者交流を行う。これらのプラットフォームにより、アーティストは他のアーティストやファンと共同で創作できるし、クリエイターと視聴者の間の障壁が取り除かれ、創作プロセスに参加型文化が育つ。
・教育的コラボレーション:Coursera、edX、Khan Academyなどのオンライン非営利教育プラットフォームは、世界中の教育者と学習者を結びつける。これらは、共同学習体験、ピアツーピアのフィードバック、グループプロジェクトをサポートし、教育へのアクセス性を高め、グローバルな学習コミュニティを育成する。
・クラウドソーシングによるイノベーション:KickstarterやIndiegogoなどのプラットフォームでは、起業家が一般の人々と協力して、新しい製品やプロジェクトの資金調達や改良ができる。このコラボレーションモデルは、幅広いユーザーからの意見やサポートをもたらし、アイデアを検証し、潜在的なユーザーのニーズや要望を満たそうとする。
今後、共同イノベーションの可能性は、広がりも深さも増し、もっと大きな(さらには世界規模の)コミュニティの集合知、多様な視点、独自の貢献によって発展し、イノベーション、芸術、科学、教育の境界が再定義されることになるだろう。
明日のクリエイティブコラボレーション
⿻実践の先端では、すでに高度な計算モデルに支えられた、リアルタイムのグローバルコラボレーションが標準となり、創造的プロセスを包括性と革新性の新たな高みへと押し上げる世界が登場している。冒頭のヘルクラネウムの巻物の物語には、過去と未来をつなぎ、多様な専門知識を融合して未知の世界を明らかにする、コラボレーションによるイノベーションの本質が詰まっている。私たちの探求にとって、これほど象徴的な始まりもないだろう。それはあらゆる偉大な発見の根底にはコラボレーションの精神、つまり想像力の限界を超えて人類を前進させ続ける精神があることを、改めて教えてくれる。ヴェスヴィオチャレンジとその受賞者は、例外的な存在などではない。むしろ、よくあるパターンなのだ。2009年のNetflix Prizeを考えてみよう。この賞では、社内の映画推奨アルゴリズムを10%上回ったチームに100万ドルが提供されることになっていた。賞金獲得競争は2年半以上も続き、最終的にトップチームが単独での作業をやめ、多様な他のチームと多様なアルゴリズムを組み合わせることでようやく成功した[3]。この概念を使えば、ニューラルネットワークをソーシャルネットワークと捉え直し、多様な視点を持つ人々の間の多様性と論争のシミュレーションもできる。おそらく、この複数の視点の同時シミュレーションこそ、ニューラルネットワークが幅広いタスクで優位に立っている理由なのだろう[4]。
この未来の萌芽は、すでにさまざまな新しい実践の中に見られる。
・合成楽器とジェネレーティブアート:1980年代に台頭した電子音楽は、これまでは高度な楽器操作が必要か、従来の楽器では不可能だった幅広いサウンドプロファイルを、電子的に合成できることが利点だった。今日では、さらに急進的な革命の芽が見られる。ますます多くのアーティストがGFMを利用し、はるかに幅広い人々が目もくらむようなさまざまな体験を合成できるのだ。たとえば、著名アーティストのホリー・ハーンドン、マット・ドライハーストとその協力者は、GFMを利用して、歴史上の人物やその場にいない他の人々の声で歌ったり、他の人が彼らの声で歌ったりできるようにしている。アーティスト兼ミュージシャンのローリー・アンダーソンは、さまざまなモデルを使用して、歴史的な様式と知恵を援用し、現代の社会問題を語るテキストを制作した。「ジェネレーティブアーティスト」と呼ばれるこの世代は、これらのモデルに埋め込まれた交差する創造性を探求し、集団精神の要素を引き出してきた。本書のプロジェクトでも、小規模ではあるが、多くの参加者の音声サンプルをブレンドして、共通の声で読み上げられるオーディオバージョンが作成された。
・異文化コラボレーション:かつては言語と文化の誤解がさまざまなコンテキストを横断する創造的なコラボレーションの主な障壁となっていたが、GFMは言語だけでなく文化スタイルも翻訳できるようになり、音楽、映画などでの融合がますます充実してきた。
・エイリアンアート:GFMは人間のアイデアの出し方を模倣し、自動化できるが、それ以外に人間が見つけそうにない方向に思考を導く「エイリアン知性」を生成できるので、多様性をまたがるコラボレーションの新素材を生み出せる[5]。たとえば、GoogleのDeepMindは当初、AlphaGoを訓練するとき、囲碁での人間の戦略を模倣させた。しかし次のバージョンAlphaGo Zeroは、他のGFMだけを相手に訓練され、ギョッとするような、面食らうが効果的な「エイリアン」戦略を生み出し、多くの囲碁名人を驚かせた。これらの多様なAI戦略とのやりとりにより、囲碁の斬新な取り組みや多様性が高まったことが実証されている[6]。このようなアプローチを、ゲームではなく文化の領域に適用すると、エイリアンの機械知能に対する「驚嘆」や共鳴を呼び起こす新しい芸術形式が出現し、それがフィードバックされて人間の新しい芸術形式を刺激するかもしれない。ちょうど「東洋との出会い」が西洋の現代美術の創造に不可欠だったことと同じだ。
・クリエイティブテストのためのデジタルツインとシミュレーション:高度なシミュレーションとデジタルツイン技術により、クリエイティブチームは現実世界の環境の仮想レプリカでアイデアを試し、改良できる。人間の行動を正確に模倣するGFMによって駆動されるデジタルツインにより、前例のないスピードと規模で、マシン内社会実験を実施できる。たとえば、人間のソーシャルメディア利用者を模倣する大規模言語モデル(LLM)エージェントが交流し合うマシン内ソーシャルメディアプラットフォームに、代替ニュースフィードアルゴリズムを展開することで、そうした代替アルゴリズムが対立や分極化などのマクロレベルの社会的結果に与える影響を調査し、検証できる[7]。
まもなくデジタルツールは、GFMとのリアルタイムの高帯域幅リモート同期によって増幅され、調和された、心のシンフォニーを解き放ってくれるだろう。しかし、これは人間とデジタルのコラボレーションによる壮大な協奏曲の序章にすぎない。これらのデジタルツールを活用し、クリエイティブコラボレーションの領域を広げる中で、人は進化し続けるダンスの中に自分たちがいることに気づくはずだ。技術は私たちを助けるだけでなく、その視点を改造し、多様なアイデアと才能の迅速な統合を促進する。いま起こっているのは、新しいクリエイティブプロセスの出現だけではない。私たちは包括的で学際的な世界的ルネッサンスの誕生に参加しているのだ。これは、次の世代の創造性と問題解決の展望を一変させるだろう。
クリエイティブコラボレーションのフロンティア
技術に支援され、増幅された「心のシンフォニー」は、単なるアイデアや創作物の交換を超えて、集合意識が創造性を再定義する領域へと進化しそうな勢いさえ見せている。
・テレパシー的な創造的交流:ポスト表象コミュニケーションの進歩により、共作者同士はアイデア、ビジョン、創造的衝動を心から心へ直接共有できるようになる。このテレパシー的交流により、クリエイターは言語や身体表現の制限を回避し、瞬時に共感し、深い直感を伴うコラボレーションの形を実現できる。
・生物種間コラボレーションプロジェクト:コミュニケーション技術が非人間的な視点を含むように拡張されると、創造性の新たな境地が開かれる。コラボレーションは他の知能種(イルカ、タコなど)にまで広がり、彼らの知覚や経験を創造プロセスに取り入れることが可能となる。このようなプロジェクトは、地球とその住民に対するさらに総合的な理解に基づいた、前例のない形の芸術とイノベーションにつながるかもしれない。
・遺産とタイムトラベルのコラボレーション:デジタル遺産と、意識の中でタイムトラベルを可能にする没入型体験の創造により、将来の共作者たちは同時代の人々だけでなく、過去や未来の人々の心とも関われるようになる。この時間的なコラボレーションにより、さまざまな時代の洞察が会話に持ち込まれ、世代を超えて蓄積された多様な視点と知恵で創造のプロセスが豊かになる。
・地球規模の課題に対する集団的創造性:コラボレーションプラットフォームによって世界中の人々がアイデアや解決策を提供できるようになるため、人類が直面している課題に対して統一された創造力で対処できる。この集団的創造性は、気候変動などの問題に対処し、多様な視点と革新的な思考の力を活用し、持続可能で影響力のある解決策を生み出すのに役立つ。
このコラボレーションの旅に乗り出すことで、人類は創造性そのものすら刷新できるかもしれない。その未来では創造性が単なる共有の努力ではなく共有の経験となり、参加者が集合的な想像力と革新の網で結びつく。しかし、人間の潜在能力が最高潮に達し、協働による天才的なシンフォニーが頂点に達したとき、私たちは倫理的な考慮と限界についても検討しなければならない。
クリエイティブコラボレーションの限界
クリエイティブなコラボレーションの未来は、新しいコラボレーション・パラダイムの可能性に満ちている一方で、さまざまな制限や倫理的なジレンマも抱えている。距離、言語、さらには個人の認知の障壁を解消する技術が可能にする、クリエイティブな相乗効果の頂点が見える一方で、ディストピア的な結果の可能性がそこに大きな影を落としている。デイブ・エガーズの名作『ザ・サークル』は、絶え間ないクリエイティブな共有が、クリエイティブな才能の源である自己意識そのものを侵食するという危険性を浮き彫りにしている。コラボレーションの拡大を追求する中で、常に次の点に留意しなければならない。
①プライバシーと自律性の喪失:あらゆる考え、アイデア、クリエイティブな衝動を即座に共有できる未来では、私的な思考の神聖さが脅かされる。絶え間ない監視と生活のあらゆる側面を共有するよう圧力をかけられる社会は、クリエイティブなコラボレーションが侵襲的になる可能性と裏腹であり、オープンさを常に求めることで個人の創造性と自律性が抑えられてしまう。
②創造性の均質化:コラボレーションプラットフォームが高度になると、相乗効果を高めるために設計されたアルゴリズムが、アイデアの均質化につながりかねない。独自の視点や型破りなアイデアが、コンセンサスとアルゴリズムの予測可能性のために平準化されてしまい、真のイノベーションが抑制されかねないのだ。これは、斬新で異質なアイデアの探索と接続に報酬を与えてくれるような、クラウドソーシング・プラットフォームとAIの設計が急務であることを示している。たとえば、プラットフォームで接続されにくい既存のアイデアとコミュニティを橋渡しするAIがあれば、クラウドソーシングによるイノベーションと共同創造のプロセスはさらに促進されるかもしれない[8]。
③技術への過度の依存:将来のコラボレーションは、技術インターフェースとGFM主導のプロセスに大きく依存してしまい、創造プロセスにおける人間技能と直感の価値が低下しかねない。この過度の依存は、社会的交流と検証のための技術依存の危険性をもたらし、従来の創造的スキルの衰退につながりかねない。
④デジタル格差と不平等:技術と情報へのアクセスによって階層化された社会では、クリエイティブなコラボレーションの将来は、既存の不平等を悪化させかねない。最先端のコラボレーションプラットフォームにアクセスできる人は、アクセスできない人よりも明らかに有利になり、技術を持つ人と持たない人の格差が拡大し、アクセスできる社会階層内で創造性が独占されかねない。
⑤操作、搾取、崩壊:企業の行き過ぎた介入によって、クリエイティブなコンテンツやアイデアが搾取される可能性がある。これは大きな懸念事項となる。企業が所有するデジタルプラットフォーム内でクリエイティブなコラボレーションが増えるにつれて、知的財産が盗用、収益化、または監視や操作に使用されるリスクが高まり、クリエイティブプロセスの完全性が脅かされる。こうした罠は、創造性へのインセンティブを減らしてしまい、金の卵を産むGFMの訓練に必要な創造性と多様性という、そもそものガチョウを殺すリスクがある。
⑥文化的多様性の浸食:創造的なコラボレーションがグローバルなプラットフォームを介して行われる世界では、地域の文化的表現や少数派の声が支配的な物語に圧倒されてしまうかもしれない。これは創造的な成果における文化的多様性の希薄化につながり、最終的には異論や多様性を均質化した平板な文化に陥りかねない。
これらの課題に対処するため、創造的なコラボレーションの未来は、人間の創造性を高める技術の計り知れない可能性と、それがプライバシー、自律性、文化的多様性を犠牲にする可能性との間で、繊細なバランスをとりつつ進まねばならない。その中心となるのは、オープンソース技術と⿻の原則の活用だ。オープンソース・プラットフォームは、その性質上、透明性と共同所有権を促進し、独占システムで発生する可能性のある隠れた独占や共謀のリスクに対抗できる。これらは、次に説明する多くの経済モデルとガバナンスモデルによってさらに強化できる。すでにそうした実践も見られ、ホリー・ハーンドン、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ウィル・アイ・アムのような一流アーティストは、GFMを活用するだけでなく、それがクリエイターに帰属、称賛、そして持続可能な生活が得られる設計となるように注意している。
さらに文化の均質化のリスクの多くは、単一のメディアがより広範な生活に侵入することから生じる。そのメディアは感覚の面で制約があるかもしれないのだ。創造性を維持するためには、創造性の基盤となる、深い親密なつながりと熟考のための空間を強化すべきだ。幸いなことに、これはまさに、前の節で説明した親密なテクノロジーの役割であり、共有される音楽や芸術的なマッシュアップの無限の流れが、物理的および文化的再生の基盤である深い人間関係を圧迫しないようにしてくれるのだ。
Stephen Parsons, C. Seth Parker, Christy Chapman, Mami Hayashida and W. Brent Seales, “EduceLab-Scrolls: Verifiable Recovery of Text from Herculaneum Papyri using X-ray CT” (2023) at https://arxiv.org/abs/2304.02084. Casey Handmer, “Reading Ancient Scrolls” August 5, 2023 at https://caseyhandmer.wordpress.com/2023/08/05/reading-ancient-scrolls/. ↩︎
Youssef Nader, “The Ink Detection Journey of the Vesuvius Challenge” February 6, 2024 at https://youssefnader.com/2024/02/06/the-ink-detection-journey-of-the-vesuvius-challenge/. ↩︎
Scott E. Page, The diversity bonus: How great teams pay off in the knowledge economy (Princeton, NJ: Princeton University Press, 2019). ↩︎
James Evans. “The case for alien AI,” TedxChicago2024, October 6th, 2023, https://www.youtube.com/watch?v=87zET-4IQws. ↩︎
Jamshid Sourati and James Evans, “Complementary artificial intelligence designed to augment human discovery,” arXiv preprint arXiv:2207.00902 (2022), https://doi.org/10.48550/arXiv.2207.00902. ↩︎
Minkyu Shin, Jin Kim, Bas van Opheusden, and Thomas L. Griffiths, “Superhuman artificial intelligence can improve human decision-making by increasing novelty,” Proceedings of the National Academy of Sciences 120, no. 12 (2023): e2214840120, https://doi.org/10.1073/pnas.2214840120. ↩︎
Petter Törnberg, Diliara Valeeva, Justus Uitermark, and Christopher Bail. “Simulating social media using large language models to evaluate alternative news feed algorithms,” arXiv preprint arXiv:2310.05984 (2023), https://doi.org/10.48550/arXiv.2310.05984. ↩︎
Feng Shi and James Evans, “Surprising combinations of research contents and contexts are related to impact and emerge with scientific outsiders from distant disciplines,” Nature Communications 14, no. 1 (2023): 1641, https://doi.org/10.1038/s41467-023-36741-4. ↩︎